B型肝炎のキャリア(保因者)の大部分は分娩時に発生すると言われます。妊婦がB型肝炎のキャリアである場合、生まれた子どもの95%に感染が起こり、85%がキャリアになります。妊娠中、ウイルスが健常な胎盤を通して胎内感染することはまれで、感染の多くは分娩時に臍帯から母体血が胎児に移行することや皮膚・粘膜を通して経産道感染が起こるとされます。このことから分娩時に感染予防処置をすればキャリアになることは大半が予防できると考えられます。
B型肝炎は血液を介して感染しますから分娩は感染の最も危険な時期です。新生児期には免疫が十分に発達していませんから感染すると持続感染、すなわちキャリアになります。分娩を介して祖母から母へ、母から娘へとB型肝炎キャリアは何世代も延々と受けつがれて、家族性に肝硬変や肝ガンを多く引き起こしてきました。このような家族性の肝臓疾患を減少させる目的で開始されたのがB型肝炎の母子感染予防事業です。日本でこの事業が開始されたのは1985年で、1995年からは保険診療に組み込まれて予防法が一般化しました。
B型肝炎のキャリアであることが妊娠中の血液検査で判明した場合には、分娩直後の新生児にB型肝炎ウイルスに対する抗体を含む免疫グロブリン製剤を投与します。この注射は出生後48時間以内と生後2ヵ月に2回投与します。B型肝炎ワクチンは生後2ヵ月、3ヵ月、5ヵ月の3回接種します。2回目のグロブリンは母親のウイルス量が少ない場合には省略します。乳児期にワクチンの効果が乏しい場合にはワクチンの追加接種をすることもあります。
B型肝炎のワクチンは世界保健機関(WHO)の指導によって世界では乳児全員に接種している国が多くなっています。先進国でワクチンを乳幼児全員に接種していないのは日本と英国くらいだと言われます。B型肝炎は東南アジアなど多くの国々で蔓延しています。今後、日本でもエイズの増加とともにB型肝炎が広く流行する危険性があります。子どもたち全員にワクチン接種をすることも必要ではないでしょうか。
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B型肝炎の母子感染
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- カテゴリ: 小児科相談
2005年4月26日掲載