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 血尿と蛋白尿を来す疾患の代表は腎炎です。腎臓の働きは糸球体という所で血液をろ過し、ろ過された液を尿細管で再吸収し、これを尿として体外に排出することによって、身体に不必要な物質を排泄するとともに必要な物質を吸収することで、体液の組成や濃度、酸塩基平衡などのバランスを一定に保つことです。急性糸球体腎炎になると糸球体の働きが障害されて血尿や蛋白尿が見られるとともに血液の生化学的なバランスや酸塩基平衡が崩れて体調の異常が出現します。

 急性糸球体腎炎は溶連菌感染症にともなって出来た免疫複合体が糸球体に沈着することによって、糸球体が障害されて発病します。腎炎の発病は溶連菌感染の後1~6週間、平均2週間くらいで起こります。患者は溶連菌感染を受けやすい4~10歳が中心で男児に多い傾向があります。

 急性腎炎の初期には肉眼的血尿が見られることがあり、尿量の減少、高血圧、浮腫などの症状が見られます。吐き気をともなう腹痛や倦怠感、食欲不振、頭痛なども見られます。まれに高血圧によるけいれんや意識障害が見られることがあります。腎炎が軽い場合には症状に気付かない場合もあります。  急性糸球体腎炎の経過はおおむね良好ですが、発病初期には尿量が減少して、体液の貯留で高血圧や高K血症(K=カルウム)など危険な症状が出る場合があります。この時期に適切な治療がなされれば、急性期は1週間ほどで終わります。尿が順調に出始めると血圧が正常化し、浮腫も消失、血液の生化学的な異常も正常化しますが、血尿が消失するには時間がかかります。

 急性腎炎の治療の原則は安静、保温、食事療法の3つです。身体の負担を出来るだけ少なくして腎臓の血流量を確保すること、食事は食塩と水分、蛋白質を制限して高血圧の管理を行います。急性期を過ぎれば安静度や食事の制限を徐々に解除します。血液生化学の異常が消失し、尿蛋白が減少すれば入院は必要でなくなりますが、血尿が続く間は経過観察が必要です。

 最近、典型的な急性糸球体腎炎を見ることが少なくなっています。抗生物質の使用など様々な原因が考えられますが、腎炎が減少したのではなく軽症化したのだと言う人もあります。症状がないからと言って安心せずに必要な検査や適切な治療を受けることが大切です。

2004年9月28日掲載

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