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 今月は子どもによく見られる貧血についてお話ししています。子どもに最も多い貧血は赤血球を作る素材が不足して起こる栄養性貧血です。中でも鉄不足による鉄欠乏性貧血が最も問題になります。

 ヘモグロビンは鉄を含む色素ヘムと蛋白グロビンが結合したもので、体内の鉄量が減少すると、ヘモグロビンの産生が低下して貧血になります。成人の体内の鉄量は3~4gであるとされますが、その量はからだの大きさに比例します。従って、急速に身体が大きくなる乳児期や思春期には鉄の需要量が増加します。体内の鉄量は3分の2が血液中のヘモグロビンに含まれ、約30%は貯蔵鉄で肝臓や脾臓に貯えられています。残りのわずかの鉄が血清鉄や全身組織に分布します。

 赤血球の寿命はおよそ120日です。古くなった赤血球は壊され、そのヘモグロビンの鉄はヘモジデリンとして貯蔵鉄になります。新しく赤血球が作られる時には、まずこの貯蔵鉄が利用されます。貯蔵鉄が枯渇すれば次には組織鉄が使用されます。組織鉄は全身細胞のエネルギー産生など重要な役割を担っているので、組織鉄が不足すると活動性の低下や倦怠感、食欲低下、情緒不安定、言葉の遅れ、異常行動などが見られると言われます。

 体内の鉄量は毎日、吸収と排出によってバランスがとられています。人では1日に1mgの鉄が排出されていますから、毎日1mgの鉄を食物として摂取する必要があります。食物に含まれる鉄量は様々ですが、食品によって鉄の吸収率は異なります。一般に植物性の食品に含まれる鉄の吸収は悪く、肉類やレバーなど内臓に含まれる鉄の吸収は良いとされます。身体が大きくなる時期には鉄の必要量が増加します。母乳に含まれる鉄量はわずかですが、その吸収率は最も優れています。これに対して牛乳の鉄は含まれる量も少なく吸収率も悪く、人工栄養児で早期に牛乳に変更することは鉄欠乏の危険性を増します。母乳栄養の母親は自分の食事にも注意を払って、乳児に十分の鉄を摂取させる必要があります。

2003年11月18日掲載

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