最近は予防接種の対象となる病気をあまり見かけなくなったために、その病気の怖さを知らない人が増えているように思います。我々、医療に携わる者の中にも麻疹や百日咳を見たことがない者が増えているのではないでしょうか。しかし麻疹でも百日咳でも一度ワクチンをしなくなったり、接種率が極端に下がると大流行することは今までの経験からも明らかです。病気が少なくなるとどうしてもワクチンの大切さやありがたさを忘れてしまいます。また元の病気の怖さを知らなければ、ワクチンは副作用ばかりが強調されて、ワクチンは悪いもの怖いものと言う印象が強くなります。ワクチンの副作用を限りなく少なくして、恐ろしい病気の流行から子どもたちを守るためにはワクチンに対する正しい知識を持ち、家族が安心してワクチンを受けることが出来る環境を整える必要があります。
現行の予防接種法では、予防接種の副作用を限りなく少なくするために、予防接種を個別接種で行うことがその主旨としてうたわれています。これは国の法律で定められたことであり、日本の子どもたちはすべて平等に個別接種できるものでなければなりません。しかし予防接種の実施主体が市町村であり、各自治体の都合によってそのやり方には大きな差があります。これは平成6年に現在の予防接種法が施行された時に、原則として個別接種で行うが、法律施行時に準備の整わない市町村では準備が整うまで従来通り集団接種で行うことが認められたからです。市町村の中には、その地区に予防接種を任すことの出来る専門の小児科医がいないところもあって、すべての市町村で同時に個別接種を開始することが出来なかったのです。
しかしこの10年の間に医療を取りまく環境は随分変わりました。子どもの救急医療と同じく、普段の健康をもっともよく把握しているかかりつけの小児科医で予防接種を受けたいと考える両親が増えているのです。近年、全国的にもこのような予防接種を近隣の市町村で受けることが出来る相互乗り入れ制度を作っている所が増えています。徳島県でもこのような制度を確立して、居住地以外の市町村でもワクチンが受けられるようにしたいものです。
県民の皆さまへ
予防接種の広域化について 1
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- カテゴリ: 小児科相談
2003年10月15日掲載