ウイルス性胃腸炎は嘔吐下痢症とも言われ細菌性胃腸炎とともに感染性胃腸炎の中では重要なものです。原因ウイルスにはロタウイルス、ノーウォークウイルス、サッポロウイルス、アデノウイルス、アストロウイルスの5種類が知られています。
口から侵入したウイルスが十二指腸から小腸の腸管上皮に感染し発病し、嘔吐・下痢・腹痛・発熱などの症状をひき起こすと考えられます。これらのウイルスは発病後1週間くらい糞便中に排出されて感染源になり人から人へ伝染します。食品についたウイルスによって食中毒の形をとることもあります。各ウイルスはそれぞれ臨床的な特徴を持っていますが、最も重症な症状を示すのはロタウイルスです。
潜伏期間は48~72時間で急激な嘔吐と発熱で発病します。2日目以降、嘔吐は少なくなり下痢が始まります。下痢に血便はなく水様便から軟便までさまざまで色調も白色、黄白色、緑白色、茶褐色までさまざまです。ロタウイルスによるものは水様便、白色便が典型的で下痢回数も多く脱水など重症化する傾向があります。ノーウォークウイルスでは発熱より嘔吐が多くロタよりも軽くなります。食品について食中毒を起こすことが多く集団発生しやすいのはこのウイルスです。サッポロウイルスやアデノウイルスは発熱の頻度は低く下痢と嘔吐のみ、または下痢だけの場合が多いと言われます。
この疾患は周囲の流行を参考にして、血便のない下痢で発熱や嘔吐を伴う場合に診断します。嘔吐や発熱だけの時期には髄膜炎や、頭部外傷による嘔吐を鑑別する必要があります。ロタやアデノウイルスでは迅速診断が可能で鑑別に役立ちます。他のウイルス性では嘔吐や発熱は比較的軽く全身状態は良好に保たれます。
嘔吐下痢症の初期には嘔吐に対する処置が大切です。固形物や乳製品は嘔吐しやすいので初期には禁止しますが、嘔吐や発熱によって失われる水分と電解質を適切に補給することが大切です。
県民の皆さまへ
ウイルス性胃腸炎 3
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- カテゴリ: 小児科相談
2003年6月25日掲載