徳島県医師会 トップページへ

  • 文字サイズ標準
  • 文字サイズ拡大
文字サイズ変更について
県民の皆さまへ

 感染性胃腸炎の中で細菌が原因のものを細菌性胃腸炎と呼びます。原因細菌にはカンピロバクター、サルモネラ、病原大腸菌、腸炎ビブリオなどが知られています。この中で最も多く見られるのはカンピロバクターです。今回の細菌性胃腸炎の代表的な疾患であるカンピロバクター腸炎についてお話ししたいと思います。

 細菌性腸炎の中で10~20%がこの細菌によるものとされます。カンピロバクターはニワトリ、牛、豚、羊など多くの家畜や犬、猫などペットの腸管に生息し、これらの糞便で汚染された食肉や水で感染します。とくにニワトリの保菌率は50~80%であり、鶏肉の内臓や皮膚は市販のものでもこの細菌で高度に汚染されており、鶏肉は重要な感染源であるとされます。またキャンプ場の飲料水や井戸水、簡易水道の水などが汚染されて感染源になる場合には集団食中毒になることもあります。ペットに接触することでも感染するとされます。

 潜伏期間は1~7日(平均2~3日)で比較的長く、症状は発熱、下痢、腹痛、悪心、嘔吐で急性胃腸炎の症状です。中でも下痢はほぼ全例に認められ90%は水様下痢、約40%が血便を示します。発熱、腹痛は90%に見られます。この疾患は一般に自然治癒の傾向が強く、腹痛や脱水に対する対症療法を行っていれば数日で改善します。しかし症状改善後にも糞便中に2~3週間排菌が続くと言われ、体力や抵抗力のない乳幼児や基礎疾患を待つ人に対しては再発の危険性、集団内での二次感染の可能性、髄膜炎や箘血症など重症化予防のために抗菌薬を投与します。この細菌は一般に人から人への接触で感染することはまれで、患者の排泄物の分別処理が徹底されていれば厳重な隔離は必要ありません。

 この疾患の予防には生肉の調理に注意することが大切です。生肉を触った手で食器や野菜を触らない。肉は十分に火を通すなど生肉にはこの細菌がついているものとして取り扱うことが大切です。

2003年6月17日掲載

© TOKUSHIMA MEDICAL ASSOCIATION.