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 左側の尻と足がしびれる【質問】

 70歳の女性です。2、3年前に左膝が痛くなり、整形外科を受診しました。湿布で痛みは和らぎましたが、今度は左の尻と左足全体がしびれます。半日の立ち仕事は平気ですが、歯磨き中に立っていられないこともあり、椅子から立ち上がるとひどくしびれを感じます。エックス線やコンピューター断層撮影装置(CT)での検査は異常なく、冷えもありません。関係があるか分かりませんが、左目の視界がゆがんで見えます。最近よく聞く「神経性疼痛(とうつう)」という病気でしょうか? 治療法などを教えてください。

 

鳴門病院整形外科 寺井智也 先生

 

 MRI検査が最も有用

 【答え】60歳以上の方の膝関節痛の原因は、関節軟骨の老化などによる変形性膝関節症が最も多いと思われます。典型的な症状は、立ち上がりや歩き始めに現れる膝の痛み(主に内側)、膝の曲がりにくさなどです。

 質問にあるようなお尻から足全体のしびれは、変形性膝関節症ではあまり見られない症状です。2、3年前の痛みは湿布で一度和らいでおり、左足全体にしびれが出現していることから、膝の痛みとは別の病態の可能性があります。

 下肢がしびれる原因は、血流障害と腰からの神経障害の両方があります。血流障害は、足の動脈の脈拍が触れるかどうかを調べることで分かります。ただ、冷えているわけではないとのことで、可能性は低いかもしれません。

 神経障害の場合、腰部脊柱管狭窄(きょうさく)症で見られる「間欠性跛行(はこう)」の症状に似ています。間欠性跛行は、安静にしていると症状はありません。背筋を伸ばして立ったり、しばらく歩いたりすると太ももや膝から下にかけて、しびれや痛みが出て歩きづらくなります。少し前かがみになることや腰をかけて休むことで軽減されます。

 ご相談の女性は、歯磨きで立っている時にしびれが出現してつらくなり、半日の立ち仕事は平気とのことです。それ以上の負荷で症状が出るようなら、間欠性跛行かもしれません。

 エックス線やCTでは神経の診断は難しく、腰部脊柱管狭窄症には磁気共鳴画像装置(MRI)検査が最も有用です。神経の圧迫部位や狭窄の程度がよく分かります。腰椎の圧迫される部位によって、しびれや痛みの場所が異なります。神経圧迫部位が現在の左足のしびれている場所と一致していれば、診断の決め手になります。

 テレビCMなどで流れている「神経障害性疼痛」は、神経が原因の痛みのことです。腰部脊柱管狭窄症の下肢の痛みは神経の圧迫が原因なので、それに含まれます。

 治療法には鎮痛剤やビタミン剤、神経の血流を良くする薬の服用、コルセットの着用、リハビリテーションなどの保存治療があります。数年前から神経障害性疼痛に対する神経痛の飲み薬も処方されるようになり、これらを組み合わせて行います。

 強い下肢痛がある場合には、神経の周囲に直接薬剤を注入する「ブロック治療」で疼痛を緩和させる方法もあります。保存治療の効果がなく、日常生活への支障が大きくなれば、手術を検討するようになります。狭くなった脊柱管を広げる手術で神経の圧迫を取り除き、症状を緩和させます。

 腰椎や膝関節の病気は視界のゆがみといった眼症状の原因にはなりませんので、気になるようであれば眼科の診察が必要です。まずは、担当医と相談して正確な診断を受けることを勧めます。

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