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HCV抗体検査で陽性
 【質問】80代女性です。2003年に受けた右肺がんの胸腔(きょうくう)鏡手術と06年の人間ドックの時、C型肝炎ウイルス(HCV)の抗体を調べたところ、陰性でした。しかし、最近受けた白内障の術前検査では陽性となっていました。HCV抗体が陽性となる要因は何でしょうか。また、ある公開講座でC型肝炎は90歳と高齢でも治療した方が良いと聞きました。どのような治療方法があるのでしょうか。


  徳島赤十字病院内科 野々木理子 先生
 ウイルス調べ治療判断
 【答え】「HCV抗体」とは、C型肝炎ウイルスに感染した時に体内で作られる抗体です。抗体が陽性ということは、HCVに感染した可能性が高いということです。ウイルスが現在も体内にいる「HCV感染状態」か、いったん感染した後に治癒して体内にウイルスがいない「感染既往者」のいずれかの状態が考えられます。
 そのため、現在もHCVが体内にいるかどうかを調べる必要があり、「HCV-RNA検査」もしくは「HCVコア抗原検査」という血液検査を行います。これらの検査で陽性だった場合がHCV感染状態、すなわちC型肝炎と診断されます。一度感染して自然に治っていた場合はHCV抗体が陽性であっても、HCV-RNAやコア抗原の検査では陰性となります。
 HCV抗体は通常、感染後にたくさん作られますが、自然または治療によって治癒した場合、年単位の時間経過とともにゆっくりと減っていきます。
 検査結果が陰性から陽性へと変化した理由は、検査方法の進歩により少量の抗体でも測定できるようになったため、過去の検査では陰性とされたものが最近の検査で陽性と判定された可能性があります。あるいは、最近になって感染したものと思われます。やはり、HCV-RNA検査などで体内にウイルスがいるか調べる必要があります。
 C型慢性肝炎はHCVウイルスによって肝臓に炎症が起こり、ほとんど自覚症状がないまま肝硬変へと進行したり、肝臓がんができたりする病気です。C型慢性肝炎と診断されれば、炎症の強さや肝硬変へ進んでいないかを検査し、できるだけ早くウイルスを排除する治療をして、肝硬変や肝臓がんへの進行を抑えることが重要です。
 従来の治療で使われていたインターフェロン(注射薬)は副作用が多く、使える人が限られていました。最近話題になっているのが、インターフェロンを使わずにウイルスを排除できる「直接的抗ウイルス薬」による治療です。
 直接的抗ウイルス薬は副作用が少なく、これまでインターフェロンによる治療ができなかった人でも治療を受けられるようになりました。直接的抗ウイルス薬はいくつか種類があり、ウイルスの遺伝子型(ゲノタイプ)によって使える薬は異なります。
 日本人のC型肝炎患者が感染しているウイルスの遺伝子型のうち、7割を占める「ゲノタイプ1型」には3種類、3割に当たる「ゲノタイプ2型」には1種類の薬が使えます。治療の成功率も9割を超えています。
 治療を受けられる年齢に制限はありませんが、できるだけ早い方が良いとされています。肝硬変の進み具合、心臓や腎臓機能の低下、肝臓がんができたことなどにより、治療が受けられないケースもあります。
 ウイルスを排除する治療ができなければ、注射や飲み薬でできるだけ肝臓の炎症を抑える対症療法が有効です。肝臓がんができていないか、定期的なチェックも必要です。肝硬変へ進行していれば、食道静脈瘤(りゅう)や腹水などの合併症に対する治療を行います。
 まずは本当にHCVが体内にいるのかどうか、治療する必要があるのか、治療した方が良いのか、肝臓の病気に詳しい医師の診察を受け、相談することをお勧めします。

 

 

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