歩くと親指の付け根が痛む
【質問】70代の女性です。1年ほど前から、散歩をしていると足の親指の付け根がピリピリと痛むことがあります。いつもではありませんが、痛みが出るとしばらく歩けなくなります。どのような原因が考えられますか。また、病院では何科を受診すればいいのでしょうか。
斎藤整形外科 斎藤慎一郎 先生
靴や中敷きで症状改善も
【答え】足の痛みの原因は、大きく分けて、足自体の骨や関節、腱(けん)が原因の痛み、脊柱管狭窄(きょうさく)症や座骨神経痛などの神経による痛み、動脈硬化などの血流障害で起こる痛みがあります。今回は親指の付け根と比較的限られた部分の痛みなので、足が原因とみて考えてみます。
足の親指(母趾(ぼし))の痛みの原因としてよく知られるのは外反母趾です。母趾の付け根が体の内側に突出し、靴にあたることなどで痛みが起こります。この場合は、足を見ると変形しているのが分かります。出っ張っている部分が赤くなるか、押さえて痛ければ外反母趾が原因と思われます。
外反母趾がなくても、付け根の関節が変形して痛みが出ることがあります。軟骨がすり減り、骨のとげができると、母趾を上にそらすことで痛みが強くなります。この部分の変形性関節症を強剛母趾といいます。この場合、一般には足の甲のほうに痛みを感じます。
一方、親指の付け根の裏、足底に痛みがあれば、種子骨障害かもしれません。足の裏側には豆粒のような骨が二つあり、その周囲の炎症で痛みが起こります。
痛みの部位や起こり方によって原因は絞り込めますが、診断にはレントゲンやコンピューター断層撮影(CT)、磁気共鳴画像装置(MRI)などを使って変形や炎症の程度を確認し、治療の方法を決めます。
足は複雑な形と機能で歩くときの強い衝撃を軽減しており、歩き方や靴を変えるだけで痛みが軽くなることもあります。痛み止めの内服薬や貼り薬、塗り薬を使う場合は、症状の強さや場所で選んで使います。靴の中敷き(足底板)で足の指の動きを制限し、関節の炎症を抑えて痛い場所に負担をかけない方法もあります。
こうした治療で改善することが多いのですが、痛みが続いて日常生活に支障があれば手術をします。
外反母趾では、中足骨という足の甲の部分にある骨を切り、変形を戻してワイヤやスクリューで固定する手術が多く行われます。
強剛母趾では、変形した関節の割合が少なければ、変形したところを切除(関節縁切除術)。変形が重度であれば、関節軟骨を削ってスクリューで固定する関節固定術を行います。
種子骨障害で手術をすることは少ないのですが、どうしても痛みが取れない場合は、種子骨を取ってしまうこともあります。
原因は同じでも症状の程度や、年齢や職業、スポーツをするかどうかなどによっても治療方法は変わってきます。まずは近くの整形外科を受診し、相談してみてください。