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【質問】 腰痛を解消したい

 83歳の女性です。整形外科で「すべり症」と診断されました。日ごろから腰痛に悩んでいます。就寝時に寝返りもできないほど痛いときがある一方で、一日中何もない日もあります。後ろ手を組み小幅で歩くと30分は散歩できます。痛み止めの薬は飲んでいませんが、つらいときには横になって安静にしていたら楽になります。腰は曲がって前かがみの姿になりました。日常生活で気を付けることがあれば教えてください。



【答え】 すべり症状 -自分で動き体力維持を-

中川整形外科(板野郡藍住町勝瑞) 中川偉文

 すべり症とは、腰椎(ようつい)の加齢性の変形性変化に伴い、腰骨の不安定性が増す疾患です。質問者は、すべり症によって腰骨が不安定になり、腰痛を来しているものと思われます。この状態が持続すると、徐々に背中の神経の通り道である脊柱管(せきちゅうかん)が狭くなり、腰痛に加えて両下肢の神経痛が出てくるようになります。このような疾患を腰部脊柱管狭窄(きょうさく)症と呼びます。

 脊柱管狭窄症は60歳以上の高齢者によく発生し、主要な症状として<1>腰痛<2>神経の圧迫に伴う下肢痛やしびれなどの下肢症状<3>立位や歩行など腰が伸びた状態で神経痛が増強し、座位や前かがみになると改善するような神経原性間欠跛行(はこう)があります。

 質問者の症例では「つらいときには横になって安静にしていたら楽になり、腰は曲がって前かがみの姿」ということなので、間欠跛行の症状が出ているのかもしれません。

 治療に関しては、大きく保存療法と手術療法に分けられます。神経症状が強くなっている場合は、手術的治療も考慮しておいてよいと思われます。しかし、ご質問の女性は83歳という年齢であることから、治療は主に保存的治療が中心になってくると思われます。

 保存的治療には<1>内服治療(鎮痛剤、筋弛緩(しかん)剤、血流改善薬など)<2>装具療法(腰の前弯(ぜんわん)を軽減するコルセット、腰椎の不安定性を抑えるコルセットなど)<3>物理療法(ホットパック、低周波などで腰背筋の緊張を緩和する)<4>ブロック注射(腰傍脊椎神経ブロック、仙骨ブロックなどでの除痛)<5>リハビリ、運動療法-などからなります。

 腰痛の強い場合には安静にしたり、痛み止めなどの内服で痛みを軽減したりすることが必要でしょう。しかし、長期間の安静は体力が低下するために、ご高齢の方にはむしろ避けなければならないと考えられ、可能な限り自分で動くことを心掛けることが大事です。

 前屈位を取るといった姿勢の工夫をしたり、手押し車やつえなどを使って前屈位を保ちながら歩いたりすることが、体力が落ちないようにする上でも重要で、日常生活において心掛けるべきだと思われます。

 慢性腰痛症や腰部脊柱管狭窄症に対しての運動療法としては<1>ストレッチング<2>筋力増強訓練<3>体幹の安定化運動-などがあります。

 ストレッチングは、股関節も含めた下肢の抱え込みによる大腿後面の筋肉を伸ばす運動などのことで、筋力増強訓練は、腹筋、背筋のバランスの良い訓練を行うことなどです。体幹の安定化運動としては、四つんばいで腰を持ち上げた姿勢をとったり、その状態から下肢を後方に蹴り出したりするような運動があります。日常的な運動によって、心肺能力の維持と体幹筋力の維持に努めることが重要と思われます。

 最後に、それぞれの治療のバランスを考えることが重要ですので、痛みのある患者さんは、お近くの整形外科専門医に受診され、相談されることをお勧めします。

徳島新聞2012年9月30日号より転載

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