左右の腎臓の外壁に袋発見
【質問】62歳の女性です。2年半前に健康診断で左右の腎臓の外壁に腎臓と同じくらいの大きさの袋が付いているのが見つかりました。医師に「先天的なもので問題ない」との診断を受け、放置していました。ところが、6月に検査を受けると、袋は大きくなっていました。医師に「もっと大きくなると腎臓の機能に支障が生じる。人工透析が必要になるかもしれない」と説明を受けました。「袋を切除するには腎臓ごと切らないとできない」と言われ、とても心配です。特に症状はないのですが、尿検査で潜血があるのはこの袋の影響でしょうか。
川島病院 泌尿器科 西谷真明 先生
水腎症引き起こすことも
【答え】腎臓は血液をろ過して尿を作ることで、体内の水分や塩分を調節し、老廃物や毒素を体の外に出す働きを持つ臓器です。腰の少し上辺りに左右一つずつあります。
腎臓の袋は、中高年によくみられる単純性腎嚢胞(のうほう)という良性疾患と思われます。
腎臓に液体の詰まった袋ができます。通常は片方の腎臓に単発でみられます。左右両方の腎臓に複数みられる場合もあります。原因は、はっきりしていません。
単純性腎嚢胞は少しずつ大きくなっていくものの、腎臓の働きが悪くなることはほとんどありません。治療を要することの少ない疾患です。ただし、嚢胞のできる場所によっては注意が必要です。
尿は腎臓外側の腎実質で作られ、内側の腎盂(じんう)に集められた後、尿管を通り膀胱(ぼうこう)に流れ込みます。流れのどこかが詰まり、行き場を失った尿で腎盂が拡張された状態が水腎症。腎臓の働きが悪くなります。短期間に尿の詰まりを取る治療をすれば、腎機能は回復します。
ところが、腎臓の血流障害も生じているため、水腎症の状態が長く続くと、腎実質が萎縮して働きが悪くなったまま元に戻らなくなります。まれですが、単純性腎嚢胞も発生場所によっては腎盂や尿管を圧迫して、水腎症の原因になることがあります。
担当医師は今後の水腎症の発症を心配しているのでしょう。気付かないうちに左右両方の腎臓に水腎症が起きて長期間放置すると、最悪の場合、人工透析が必要になる恐れがあるとの説明だと思います。
単純性腎嚢胞に水腎症が合併する場合には、痛みなどの症状がなくても治療が必要です。
治療は手術で嚢胞を切除する以外では、腎嚢胞穿刺(せんし)があります。背中の皮膚から嚢胞内に細い管を通し、中にたまった液体を抜いた後、アルコールなどの薬剤で再び液体がたまらないようにします。局所麻酔ででき、体に負担の少ない方法です。ただ嚢胞が大きい場合は効果が小さく、皮膚から深い所に嚢胞がある場合は合併症の危険性が高まります。
最近は腹腔(ふくくう)鏡を使い、体への負担が少なく手術できます。手術について、再度担当医師に相談してください。
尿潜血は単純性腎嚢胞でもみられます。しかし、他の病気が隠れている可能性も完全に否定できません。嚢胞の状態と新たな病気の有無をチェックするため、定期的な診察を欠かさないことが大切です。