舌が痛み薬も効かない
【質問】58歳女性です。舌痛症と診断されました。痛み止めは全く効きません。痛さを紛らすためにガムをかんでいます。それでも痛くて精神的におかしくなりそうなため、安定剤を飲んでいます。どうしたら治りますか。
徳島赤十字病院 耳鼻咽喉科 千田いづみ 先生
ストレス避け口内清潔に
【答え】舌の痛みを引き起こす原因は▽口内の乾燥▽細菌や真菌(カビ)による炎症▽がんなどの腫瘍▽貧血▽鉄、亜鉛といった微量元素やビタミンの欠乏▽薬剤の副作用▽喫煙による口の粘膜障害▽歯科金属アレルギーや義歯の不適合―が挙げられます。
診察ではまず舌の痛みの原因になる疾患、例えば舌炎やがんなどの腫瘍がないかを調べます。
舌炎が疑われる場合は、舌表面から菌検査をして細菌や真菌の感染がないかを調べます。
舌の発赤が強かったり、白苔(はくたい)が多くついていたりすると、真菌感染症を疑います。抗真菌薬を舌に塗ったり、うがいをしたりすると痛みが軽くなります。
血液検査で貧血や微量元素やビタミンの欠乏症がないかを調べます。微量元素やビタミンの欠乏症があれば、それらを多く含む食品を取るようにしたり、薬で補充したりします。普段からバランスのいい食事を心掛けてください。
口内が乾燥している場合は唾液量を測定します。加齢による唾液分泌の低下や唾液や涙の分泌が低下する自己免疫疾患の可能性があります。糖尿病も口内が乾燥し、炎症を引き起こしやすいので要注意です。
「舌がピリピリと痛い」「焼けるように痛む」などの症状があり、検査をしても原因が見つからない場合に舌痛症と診断されます。舌痛症の特徴は<1>中高年女性に多い<2>舌表面に焼けるような痛みがある<3>舌の両縁や先端が痛くなることが多い<4>食事や会話時、趣味など物事に集中している時に痛みは消える―です。舌炎や腫瘍は食事の時に舌が歯や食べ物に接触して痛みが強くなるのに対し、舌痛症はガムやアメを口に含んだ時に痛みが軽くなるようです。
舌痛症は原因や仕組みがはっきりと分かっていません。▽口内乾燥▽舌粘膜の過敏性▽痛みに関与する末梢(まっしょう)・中枢神経の障害▽心理的要因―などいくつかの原因が複雑に関わっているといわれます。
舌痛症の治療は、局所治療や内服治療、心理療法を組み合わせて行います。市販の口腔(こうくう)保湿剤を舌に塗ることで痛みが軽くなることがあります。過剰な舌磨きをやめ、舌の粘膜を傷つけないことも大切です。歯や義歯に不具合がある場合は歯科で相談してください。喫煙者は必ず禁煙し、口を清潔に保ちましょう。
医師と相談しながら、焦らず丁寧に一つずつ要因を取り除いていきます。過労やストレスを避け、十分な栄養と休息をとり、生活のリズムを整えることはとても大切です。患者さん自身が自分の症状を理解することが治療に結びつきます。どんな時に痛みが強くなるのか、軽くなるのかを知り、舌の痛みが軽くなるようにセルフケアを行うといいでしょう。