アレルゲン免疫療法の効果
【質問】30代女性です。十数年前から、この時季になると花粉症(主にスギ花粉)に悩まされ、経口薬や点鼻薬、点眼薬でしのいでいます。アレルゲン免疫療法(皮下免疫療法、舌下免疫療法)というのがあるようですが、効果と副作用、メリットとデメリットは何ですか。その他に良い治療法があれば教えてください。
徳島大学病院耳鼻咽喉科 北村嘉章 先生
唯一の根本的治療法
【答え】アレルゲン免疫療法は約100年の歴史があり、アレルギー症状を治したり、長期間和らげたりといった効果が期待できる唯一の根本的治療法です。軽症から最重症の患者まで広く適応できます。アレルギーの原因となるアレルゲンを少しずつ投与して体に慣らし、アレルギー症状が出にくい体質にします。
経口薬や点鼻薬、点眼薬といった薬物療法は一時的に症状を抑えるだけの対症療法なので根本的な治療ではありません。
アレルゲン免疫療法は治療期間が3~5年と長いです。治療開始前には鼻ポリープやアデノイド肥大、鼻中隔弯曲症、腫瘍など鼻の中に他の病気がないか診断が必要です。
スギ花粉症に対する舌下免疫療法は2014年に保険適用されるようになりました。以前から行われている皮下免疫療法より安全性が高いので、急速に普及しました。全国で約10万人の患者に行われています。さらに、これまで12歳以上だった保険診療の対象が今年から原則5歳以上に引き下げられました。小児患者にも普及が進んでいます。
効果は薬を全く使用しなくても無症状になる根治状態の人が2割弱。一方、効果のない人は1割程度です。残りの6、7割は薬物療法と同じかそれ以上の効果があるとされます。
副作用としては、口内の腫れや喉のかゆみがあるものの、アナフィラキシーショック(急性アレルギー反応)など全身反応が非常に少ないのがメリットです。
錠剤が液剤より含有量が多く効果が高いです。それでも新薬なので来年4月末まで2週間ごとの通院が必要です。
皮下免疫療法(注射)は舌下免疫療法と同様に効果が高いのがメリットです。しかし、副作用として注射部位の痛みや腫れがあります。舌下免疫療法よりもぜんそく発作やアナフィラキシーショックといった全身反応が起こる危険性が高いのがデメリットです。そのため治療できる医療機関が限られます。
その他の治療法として、手術療法も広く行われています。鼻詰まりを改善する鼻腔整復術と、鼻水とくしゃみを減らす後鼻神経切断術が同時に行われることが多いです。即効性があり、多数のアレルギーを合併している人に有効な治療法です。