【質問】 30分から1時間の排尿間隔
35歳の女性です。最近、排尿の間隔が短くなり、30分から1時間ほどでトイレに行きたくなります。病院では「過活動膀胱(ぼうこう)」と診断されました。薬で治すことは可能でしょうか。また、普段の生活で気をつけることはありますか。
【答え】 過活動膀胱 -薬物療法主体に、訓練も効果-
徳島大学病院 泌尿器科 山本 恭代
膀胱の機能には、主に尿をためる蓄尿機能と尿を排出する排尿機能があります。蓄尿障害が起こると▽1日の排尿回数が8回以上になる頻尿▽就寝中に排尿のため1回以上起きる夜間頻尿▽我慢できないような尿意が突然生じる尿意切迫感▽尿失禁-などが生じます。
過活動膀胱とは、こうした蓄尿障害の一種で、尿意切迫感、頻尿、トイレに行ってもドアノブに手をかけたところで漏れてしまう「ドアノブ尿失禁」、水仕事をしたり水の流れる音を聞いたりしただけで漏れてしまう「手洗い尿失禁」など、強い尿意を伴う切迫性尿失禁が主な症状です。
日本では、40歳以上の12.4%が過活動膀胱と考えられており、患者数は800万人以上といわれている比較的多い病気です。
原因は、脳や脊髄(せきずい)など神経の病気によるもの、加齢や経産婦によくみられる骨盤底が弱まることによるものなどがありますが、原因が分からないこともよくあります。特殊な検査を行わなくても症状だけで診断できますが、尿検査や超音波検査で、膀胱炎や膀胱結石、膀胱がんなどがないことを確認する必要があります。
また、頻尿だけではなく、尿がたまってくると下腹部に激しい痛みが生じ、排尿とともに症状が改善するような場合は、間質性膀胱炎の可能性があります。
診断には、1日の排尿記録を付けることが有用です。何時にどのくらいの量の排尿があったか、尿失禁の有無、水分摂取量などを数日間記録します。
夜間頻尿がなく、昼間だけの頻尿の場合は、心因性の頻尿という可能性もあります。膀胱は心の鏡ともいわれており、緊張するとトイレが近くなったり、逆に出にくくなったりすることはよくあります。また、水分を取り過ぎて頻尿になる人もいるため、排尿記録は診察に役立ちます。
過活動膀胱の治療は、薬物療法が主体となります。膀胱の収縮を抑える抗コリン剤の内服が有効で、切迫性尿失禁や尿意切迫感、頻尿が改善します。数種類の薬剤があるため、自分に合うものを主治医と相談して処方してもらってください。副作用として、口内乾燥症や便秘、眼圧の上昇があるので、緑内障のある人が抗コリン剤を処方される場合は、眼科医の診察が必要です。高齢者は認知障害にも注意してください。
日常生活で気を付けることは、水分やカフェインを過剰に摂取しないことです。また、排尿したくなっても尿意を我慢して排尿間隔を引き延ばす膀胱訓練も効果があります。5分間我慢できるようになったら、10、20、30分と少しずつ延ばし、2~3時間の排尿間隔が得られるようになることを目標にしてください。尿道や膣(ちつ)、肛門(こうもん)を引き締める骨盤底筋体操も有効といわれています。
これらの治療で改善しない場合は、泌尿器科専門医の受診をお勧めします。