【質問】 日中は正常範囲なのですが・・・
65歳の男性です。最近雑誌で「仮面高血圧」という言葉があることを知りました。私は、日中の血圧は正常範囲なのですが、早朝などに高くなるので気になります。仮面高血圧の特徴や、その場合の血圧の測り方を教えてください。
【答え】 仮面高血圧 -脳心血管リスク高い病態-
田蒔病院 田蒔 正治(徳島市国府町)
高血圧とは一般に、病院の診察室で測定した血圧が最高140以上、最低90以上の両方、またはどちらか一方でもある状態です。しかし、その測定値は、診察室と家庭とで違う場合があります。例えば、病院では緊張して血圧が高くなり、家庭で測定すると低いという方がいます。これを「白衣高血圧」と呼びます。
一方、病院での測定値が正常であるにもかかわらず、家庭での値が高い方もいます。正常血圧という仮面を付けている高血圧という意味で、これを「仮面高血圧」と言います。仮面高血圧は、将来の脳心血管リスクが非常に高い病態として特に注目されています。
日本高血圧学会の最新のガイドラインによると、仮面高血圧は、病院で正常血圧を示す方の10~15%、既に血圧の薬を内服している方の約30%と多く、注意が必要です。
仮面高血圧の原因としては、ストレスや喫煙、アルコール、メタボリック症候群、糖尿病、心血管疾患の合併などが考えられています。特に、ヘビースモーカーや多忙でストレスの多い方は要注意です。
仮面高血圧は、高血圧の治療を受けている方にも見られます。診察時の血圧は正常なため、服用中の降圧薬で血圧が安定していると思い込み、仮面高血圧を見過ごす場合や、前日の朝に内服した薬が翌朝は切れて血圧が上昇し、仮面高血圧を呈する場合もあります。
通常、人は夜間に血圧が低くなる傾向があります。これを「正常型」や「ディッパー」と言います。しかし、中には夜に血圧が下がらない「ノン・ディッパー」、あるいはむしろ夜間の方が血圧が上昇してしまう「夜間昇圧型」という人も存在します。
また、起床後に血圧が異常に高くなる「モーニングサージ」という現象もあります。「仮面高血圧」は、この「ノン・ディッパー」や「モーニングサージ」などによって、家庭血圧でしか血圧上昇を捕らえられない人を指すことが多いです。
では、仮面高血圧の人は家庭でどのように血圧を測ったら良いのでしょう。治療の要点は、早朝血圧に基づく降圧療法を行い、24時間にわたって正常血圧レベル、つまり家庭血圧が正常レベル(最高135未満、最低85未満)にすることです。早朝高血圧は、家庭用血圧計で早朝の血圧を測ることでわかります。
手首や指で測るタイプは誤差が出やすいので、なるべく上腕で測るタイプを使用します。安定した血圧を測るために五分くらい前からリラックスし、腕帯と心臓の位置が同じ高さになるようタオルなどを置いて調整すると良いでしょう。
家庭血圧を測るポイントは、朝夕の2回、それぞれ二度ずつ測り、低い方の数字を記録することです。結果は毎日記録して受診時に担当医に見せてください。