徳島県医師会 トップページへ

  • 文字サイズ標準
  • 文字サイズ拡大
文字サイズ変更について
県民の皆さまへ

【質問】 浣腸薬を常用体の負担に

 便秘に悩む42歳女性です。飲み薬がまったく体に合わず、10年以上にわたって、週に2~3日、市販の浣腸(かんちょう)薬30ミリリットル成人用を4個使用しています。健康誌では、浣腸を常用すると腸の動きが悪くなり、自然なお通じがなくなると書かれているので心配です。仕事の関係で食事が不規則なため、自然なお通じは期待できませんし、今の方法は体と心に負担となっています。何か治療・改善法があれば教えてください。人から点滴のような形でチューブを肛門(こうもん)に入れると、腸洗浄ができると聞きました。アドバイスをお願いします。



【答え】 慢性便秘 -生活習慣の改善を-

木村内科胃腸科 副院長 木村 好孝(吉野川市鴨島町西麻植)

 便秘の分類はいろいろありますが、原因によって大きく2つに分けられます。一つは、がんや炎症、癒着(ゆちゃく)など器質的な原因で腸が狭窄(きょうさく)する器質的便秘。もう一つはそうした異常がなく腸管の機能異常による機能的便秘です。

 相談の人は、10年以上前から慢性便秘で悩まれており、機能的便秘が考えられます。機能的便秘には、結腸の緊張の緩みで蠕動(ぜんどう)運動が弱くなり便を十分押し出すことができない弛緩(しかん)性便秘と、糞便(ふんべん)が直腸内に送られても正常な排便反射が起こらずに停滞する直腸性便秘があり、両方が合併しているケースと思われます。仕事でのストレスや不規則な食生活が原因となりますので、日常生活では次の5点に注意してください。

 まず、排便の習慣を身につけることです。決まった時間にトイレに行きましょう。一般には朝起きると起立反射が起こって大腸が動き始め、飲み物や食べ物を取ると胃結腸反射が起こり大腸が大きく動きます。そのため、朝食を取ったあとにトイレに座る習慣をつけてください。

 次に、軽い運動で腸を刺激することです。運動で体を動かすことは腸の運動を直接促します。1日30分くらいのウオーキングなどで適度な運動をするよう努めてください。

 ストレスをためないようにすることも大切です。ストレスなどで緊張すると、腸も緊張し便秘がひどくなることがあります。ストレスを受けないことは不可能ですから、ストレス発散に心掛け、心にゆとりを持ってください。

 腸に適度な刺激を与える食品を取るようにしてください。水に溶けない不溶性の食物繊維は腸内に発生した有害物質の排出を促す作用があり、便秘の予防や腸に関する病気を抑制します。野菜、果物、海藻、豆類などには多く含まれていますので、積極的に取りましょう。ヨーグルトに含まれるビフィズス菌には整腸作用があります。1日1回はヨーグルトや乳酸菌飲料を取りましょう。

 最後に、規則正しい食事生活を送ることです。食事量が少なすぎると便の量が減りますので、1日3回きちんと食事を取るようにしましょう。水分も適量取りましょう。

 以上の生活の改善だけで十分な効果がない場合には薬物療法が必要です。一般的には、塩類下剤の酸化マグネシウムや腸管運動作用のあるパントテン酸の服用、場合により大腸刺激下剤を使います。漢方薬でも有効な場合もあります。浣腸の連用は、直腸肛門機能を弱めることになり、あまりお勧めできません。

 さて腸内洗浄ですが、肛門から専用チューブで温水を出し入れすることによって自然な便排せつを促す治療法です。施設により多少方法は異なりますが、ぬるま湯を1~2リットル、横行結腸や上行結腸まで注入した後、腹部マッサージを行って腸の活動を促し、排せつを数回にわたって行います。現時点では、私費診療で限られた施設においてのみ行われています。自宅でできる簡易なものも販売されていますが、使用の際には十分注意してください。器具は使い捨てなので消毒などは不要です。

 いずれにしろ、10年以上も自然なお通じがないという状態が、「また出ないのでは」との不安や緊張を招き、そのストレスで腸の働きがますます悪化していると考えられます。心身の両面からサポートしてくれるかかりつけ医を持って定期的に通院し、きちんと管理をしていくことが大切です。器質的便秘を否定するためにも、大腸の検査を受けることをお勧めします。

徳島新聞2007年9月23日号より転載

© TOKUSHIMA MEDICAL ASSOCIATION.