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【質問】 治療後も長引くせき

 20代の男性です。1年前、せき込んで止まらなくなり、夜も眠れない日が何日か続きました。病院に行くと「マイコプラズマ」という病名を告げられ、薬をもらって帰りました。そのときはぴたりと止まったので治ったと思っていたのですが、しばらくしてから何度か同じような症状が出るようになりました。市販の薬を飲んでいましたが、最近はあまり効きません。人に感染したりしないのでしょうか。やはり、もう一度病院を受診して検査を受けた方がいいでしょうか。治らない病気なのでしょうか。もし治らないのであれば、この病気とうまく付き合う方法を教えてください。



【答え】 マイコプラズマ -他の病気誘発も 診断を-

徳島県立中央病院 呼吸器科 葉久 貴司

 マイコプラズマというのは細菌とウイルスの中間に位置する病原微生物による感染症で、上気道炎、気管支炎、肺炎を起こします。従来、4年ごとのオリンピック開催年に流行していましたが、近年その傾向は崩れてきており、昨年から今年にかけて報告が増えています。

 感染は主に感染患者からのせきやたんからで、学校、家庭など比較的閉鎖環境で地域的に流行します。病気にかかる年齢は小児から若年者が主体で、高齢者はまれです。潜伏期間は通常2~3週間で、初発症状は発熱(高熱)、全身けん怠、頭痛など。その後せきが始まることが多く、徐々に強くなります。治療を受けて解熱後も、せきは3~4週間と長く続くことが多いのが特徴です。

 一般に、全身の症状は軽症から中等症ですが、せきは発作性で夜間や早朝時に強くなるなど、ぜんそくのような症状を示すことも多く、肺炎から急性呼吸不全に至る重症例もあります。血液検査では白血球数は正常もしくは増加、炎症反応(CRP)は中等度以上の陽性を示し、肝機能の上昇が一時的に認められることも多いようです。

 肺炎を起こすと、胸部レントゲン写真は均等で淡いスリガラスのように見えることが多いですが、気管支肺炎像などの場合もあり、レントゲンのみで診断することは困難です。病原微生物の検出法にはたんなどからの分離培養法、抗原検出法、PCR法などがありますが、高額で日数もかかり、可能な施設は限られます。

 一般的には血清診断法が利用され、特異な血清抗体測定は、補体結合反応(CF)や粒子凝集反応(PA)などで診断されます。いずれの方法も発病初期と2~3週間後の血清で、4倍以上の抗体価の上昇が認められればより確実です。

 最近、抗体の一種IgMを迅速に検出する反応キットが開発され臨床応用されていますが、やや判定に慎重さが必要なようです。治療は抗菌薬の投与が基本ですが、ペニシリン系などは感受性がなく、マクロライド系やテトラサイクリン系が強い抗菌作用を持っています。また、ニューキノロン系抗菌剤の一部も有効です。持続的な排菌例もみられるので、これらの抗菌剤を10~14日間投与することが一般的です。

 質問の内容からは、何らかの方法でマイコプラズマと診断されたようで、抗菌薬も有効だったと思われます。ただ、マイコプラズマは急性期を過ぎてもせきだけが残る場合が多くみられ、少なくとも病原菌による誘発ではなく、気道でのアレルギー性炎症が残っているか、病原体による炎症はなくなっても粘液の産生が持続していることなどが考えられます。

 3~8週間のせきでしたら、かぜ症候群後遷延性咳嗽(せんえんせいがいそう)(感染後咳嗽)が多く、8週間以上せきが続く場合は慢性咳嗽といい、せきぜんそくやアトピー咳嗽などの可能性があります。マイコプラズマは気管支ぜんそくの発症や誘発に関与することも指摘されています。それぞれ有効な薬が違いますので、むやみに抗菌剤などを服用することなく、呼吸器科やアレルギー科の専門の先生に相談することをお勧めします。

徳島新聞2007年9月2日号より転載

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