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【質問】 手首骨折の回復中に痛み

 62歳の女性です。3カ月前に登山をしていて滑りかけ、右手を突いて立ち上がったときに違和感を覚えました。2日後に整形外科を受診すると、右手首骨折と診断されました。六週間でギプスが取れ、リハビリをし、順調に回復していると思ったのですが、親指、人さし指、中指にしびれ感があります。手首は角度によって痛みがあり、重い感じがして、少し膨れて変形しています。どうすればよいのでしょうか。



【答え】 橈骨(とうこつ)遠位端骨折蹠 -温めて症状を和らげて-

森本整形外科 森本 博之(徳島市津田本町4丁目)

 手首骨折とは、前腕(ひじから手首まで)の親指側にある橈骨の手首に近い場所での骨折ですが、橈骨における手首の部位は体の中心から遠く離れているので、専門的には橈骨遠位端骨折〈図参照〉と言います。

 この骨折は、転倒して地面に手のひらを突いた際に発生します。子どもの骨折では最も頻度の高いものです。また、50歳以上の女性でカルシウムの少ない骨粗しょう症を伴った人では、軽い衝撃で簡単に骨折してしまいます。

 症状は、手首に疼痛(激しい痛み)や腫れがみられ、手首が変形し、指に力が入らなくなります。さらに、指にしびれ感をきたすこともあります。

 治療は、手術をしないでギプスなどで固定する保存的治療法が原則です。骨折部位のずれがない場合だけでなく、ずれがある場合でも整復してギプス固定を行います。固定期間は成人で4~6週間ぐらいですが、骨のつきが悪い場合はさらに長くなることがあります。

 順調にいけば、骨折後2カ月ぐらいで少し手が使えるようになります。6カ月ぐらい経過すると、ほぼ普段通りに回復します。

 骨折のずれが大きい場合や骨折部がばらばらで極めて不安定な場合には、手術による治療を行います。手術方法は皮膚の上からピンを入れて固定する方法や、皮膚を切開して中に金属板を入れ、ねじで骨折部を固定する方法があります。皮膚を切開しない創外固定法という治療もあります。

 ギプスが外れると、リハビリテーションを行います。手首は特に硬くなりやすいので、ギプス固定中に指を動かしたり、可能ならば指先に力を入れたりしておくと、ギプスを外した後のリハビリテーションを円滑に行うことができます。

 リハビリテーションは、ギプス固定によって硬くなってしまった手首をゆっくりと時間をかけて柔らかくし、弱った力を強くしていきます。しかし、硬くなった手首を無理やり動かすと、痛みや腫れ、指のしびれ感を伴うことがあります。

 手首を温めると、これらの不快な症状は和らぎ、さらに治療の促進効果も期待できます〈表参照〉。自宅の浴槽などに温水を注ぎ、ひじから指先まで温めながら、ゆっくりと時間をかけてひじ、手首、指を動かしてください。これだと毎日できるはずです。

 あせらずに根気よく続けることが大切です。そうすれば、今の不快な症状は少しずつ改善してくるはずです。

徳島新聞2006年10月15日号より転載

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