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【質問】 手首から先が腫れて重い

 40歳の娘が昨年12月半ばごろ、「右手親指と人さし指の第2関節が痛い」と言い出しました。娘は母方の三親等以内にリウマチ患者が2人います。1カ月後、近くの医院を受診し、血液検査を受けましたが、抗核抗体が軽度の陽性以外は正常でした。微量のステロイド点滴を受け、処方してもらった錠剤をのみました。痛みは軽減されたものの、発症約3カ月の現在ではほかの指にも浅く、広く広がっているようです。手首から先が重い感じで腫れぼったく、左手も少しおかしいし、脚もひざから下が重いようです。土踏まずも少し痛いようですが、朝のこわばりはありません。「早期発見、早期治療」と言いますが、初期に抗リウマチ剤で抑えられないでしょうか。リウマチの怖さはよく知っているので、このまま経過観察してもいいのかと心配です。



【答え】 リウマチ -早期の診断と治療が大切-

美摩病院(吉野川リウマチセンター)院長 四宮 文男(吉野川市鴨島町上下島)

 娘さんの症状、文章から推察できる範囲では関節リウマチにかかっている可能性は50%程度と考えられます。朝のこわばりはありませんが、手や指の関節に腫れがあり、日常生活に多少の制限があるようですので。

 ただ、あまり心配しすぎるのは考えものです。定期的に診察と検査を受けておくことが大切です。関節リウマチと診断されれば、適切なリハビリや抗リウマチ薬などの治療を開始してください。早期リウマチの時期に治療を始めれば、多関節の腫れや痛みも軽快し、将来、日常生活に障害を来すことは少なくなってきています。

 関節リウマチの診断で最も大切なのは診察の所見です。3カ所以上、特に手や指の関節が対称性に腫れていないかどうか、リウマチ患者さんを多く診ている医師が診察すれば診断することができます。

 次にレントゲン検査です。早期の患者さんでも手や手の指、足の指のレントゲン検査で何らかの変化が見られることは少なくありません。さらに関節のMRI検査を実施すれば、関節炎がよく分かります。

 血液検査も参考になります。いわゆるリウマチ反応はリウマトイド因子という自己抗体の有無を調べますが、関節リウマチ患者さんでも20%は陰性です。健康な人でもまれではない頻度で陽性に出ます。

 抗核抗体をはじめとした自己抗体も同様なので、診断が疑わしい場合には数種類の検査を組み合わせることが必要です。簡単な検査である赤沈やCRP検査がより重要です。多関節の腫れがあってCRP検査が陽性になれば、関節リウマチの可能性が高くなります。朝のこわばりの有無、家族にリウマチの人がいるかなども参考にはなります。発病に遺伝素因が関与していることは明らかにされていますが、環境要因などが加わってはじめて発病する病気であり、遺伝病のようにどんどん遺伝する病気ではありません。

 リウマチ治療の目標は、炎症を抑えて多関節の腫れや痛みをなくすることです。そしてリウマチが怖い病気とされてきた理由である関節破壊を予防することです。そのためにも発病から1年以内、関節変化の軽い早期から治療を開始することが大切です。治療は急速に進歩しています。「早期に適切な治療を開始すれば、障害を残すことはありません。リウマチは治る病気です」と言い切れるようになる日もそう遠くはありません。

 何よりも薬物療法が進歩しました。従来の消炎鎮痛剤、ステロイド剤、抗リウマチ薬に加えて新しい免疫抑制剤や生物学的製剤を使用することが可能となっています。もちろん、その効果を高めるためにも患者さんが自ら行う日常生活の中での養生、基礎療法や適切なリハビリは欠かせません。私たちはリウマチ教室などの取り組みの中で日常診療だけではなく、啓蒙(けいもう)活動を重視しています。

 治療には時間が必要ですが、適切な治療を受ければよくなります。社会生活や家庭生活はそのまま続け、専門医と相談しながら根気よく治療を続けることが一番大切です。

徳島新聞2006年3月12日号より転載

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