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【質問】 脚のしびれが取れない

 80歳の女性です。昨年6月に腰痛で整形外科を受診したところ、第二腰椎(ようつい)の圧迫骨折と診断されました。「家で安静にしていれば1カ月後には、痛みは治まる」と言ってくれましたが、一人暮らしなので入院をしました。ところが第三腰椎も圧迫骨折していたことが分かり、入院は2カ月余りに及びました。その間は痛くて、トイレに行くほかは起き上がれませんでした。そのうちお尻から足の裏側までしびれてしまいました。退院した現在では腰の痛みはないのですが、脚のしびれが取れません。毎日腰が重くてつえが頼りです。しびれが取れる方法はありませんか?



【答え】 腰部脊柱管狭窄症 -まず体操で血流良くして-

森本整形外科 森本 博之(徳島市津田本町4丁目)

 質問の女性は「第二腰椎と第三腰椎の圧迫骨折後に、お尻から足の裏側までしびれが取れない」ということなので、腰部脊柱管(せきちゅうかん)狭窄(きょうさく)症が最も疑われます。

 腰の脊椎骨の中に脊柱管と呼ばれる穴があります。腰椎の圧迫骨折によって脊柱管がくずれると、その中を通っている神経(馬尾神経)に栄養を供給する血液の流れが悪くなり、神経の機能障害を起こします。

 症状はしばらく歩くと、腰痛や下半身のしびれ、脱力感などで歩き続けることができなくなります。ただ、しばらく立ち止まったり、腰を曲げたりして休むと再び歩けるようになります。この症状を間欠性跛行(はこう)といいます。

 この疾患の治療には種々の方法があり、単独あるいは組み合わされて行われています。治療の原則は患部の血液の流れを良くすることに置かれています。

 薬物療法には、神経組織の血液の流れを良くする血管拡張薬(プロスタグランディン製剤)、ビタミンB剤、同E剤などがあります。

 また、個人の体質や特徴を重視する漢方薬も期待できます。漢方は病人の状態を診るのに、独特な考え方があります。血の流れが滞るとお血(おけつ)という状態になります(俗に古血とも呼ばれるものです)。お血を取り除いて、血の流れを改善する薬が駆お血剤です。お血と虚証(体力が落ち込み過ぎている状態)があると、当帰芍薬(しゃくやく)散や疎経活血湯などの駆お血剤を処方します。

 物理療法は、ホットパックやマイクロウエーブなどで患部を温めることによって、硬くなった筋肉をほぐし、血液の流れを良くします。

 体操療法は、急激なストレスを加えずに四肢、体幹の筋力増強を図るために臥位(がい)(寝転んだ姿勢)で行います。臥位でなく座位で行うことのできる体操も推奨されます〈図参照〉。これらの筋肉運動は「第二の心臓」とも言われていて、血液の流れをスムーズにするポンプの役目もしています。

 手術療法は、狭くなってしまった脊柱管を脊椎骨の後方から骨を削って内腔(ないくう)を広げて血行を良くする方法です。

 以上、腰部脊柱管狭窄症について述べましたが、この病気とよく似た症状の疾患としては、閉塞(へいそく)性動脈硬化症があります。足の色が悪く、のどが渇くなどの症状があれば、糖尿病による血行・神経障害も疑われます。血管外科、循環器科、糖尿病などの専門医に相談することをお勧めします。

徳島新聞2006年3月5日号より転載

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