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【質問】 体だるく、やる気起きない

 大学を卒業して、4月に就職したばかりの24歳男性です。やる気満々で仕事を始めたのですが、最近、体がだるくて、朝起きるのもひと苦労です。会社では失敗ばかりで「もう仕事なんかどうでもいい」と投げやりな気持ちにさえなってきました。食欲もあまりありません。メル友に相談したら「五月病」ではないかと言われました。五月病ってなんですか。ノイローゼなのでしょうか。治らないのでしょうか。私は社会人には向いていないのでしょうか。とても心配です。



【答え】 五月病 -自分責めず医師と相談を-

鳴門シーガル病院 副院長 福永 明広(鳴門市瀬戸町堂浦)

 まずはご質問の「五月病」から説明しましょう。「五月病」とは広く知られた言葉ですが、実は医学用語とは異なり、決まった概念、定義があるわけではありません。一般には4月に希望にあふれて入学または入社した人が、5月の連休明けごろから急激に勉学や仕事への意欲を失い、無気力な状態に陥ることをいいます。

 大学生の場合、講義や実習に出席できずに、長期の留年を繰り返すことが多く、社会人では、出社拒否という形で無断欠勤が続くこともあります。

 共通するのは、期待していたはずの新しい環境に適応できずに、そこから回避しようとする行動です。性格的には、きちょうめんでまじめな人に多いようです。

 さて、これらの症状が短期間で済む場合は、さほど問題になりませんが、長期に渡ると、いわゆる「ひきこもり」に移行し、社会復帰が困難な状態になることがあります。

 【原因】

 ケースによってさまざまですが、おおざっぱに言うと、環境の変化によるストレスの蓄積と、自分の期待とかけ離れた現実への失望感が多いように思われます。

 社会人の方で多いのは、これまでは学問や単位取得といった限られた目標さえクリアすればよかった狭い世界から、上司との人間関係、同僚との競争といった複雑な世界への変化についていけなくなるなどのケースです。

 人間は皆「自分を認めてもらいたい。正当に評価してほしい」という願望をもっています。それがうまくいかないときに、一部の人には、退却・逃避行動として表れるのではないでしょうか。学生時代からクラブ活動やサークル活動などに属し、人間関係の密だった人には、こういった反応は比較的少ない印象があります。

 【診断および治療】

 精神科的には「適応障害」「軽度うつ病」と診断されることが多いと思います。

 症状としては、不眠、気分の落ち込み、意欲の低下、仕事が手に付かない、といった精神症状と、全身倦怠(けんたい)感、食欲不振、頭痛、めまい、動(どう)悸(き)などの身体症状が表れます。重度のうつ病に進展することもあります。

 決して単なる怠け心と自分を責めることなしに、精神科のクリニックや、かかりつけ医などに相談してください。いったん、重い肩の荷を降ろし、ゆっくりと自分の状況を人に聞いてもらうことが大切です。

 症状の強い場合には、休暇を取り、補助的に薬を併用することで、随分と心は楽になっていきます。最近は、一般の人たちが心配する副作用の極めて少ない薬が、次々と開発されていますので、安心してください。

 最後に、こういった状況を一時的な「心のスランプ」として、温かく見守ってあげることのできる社会環境も望まれるところです。

徳島新聞2004年4月25日号より転載

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