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【質問】 舌に繰り返し円形くぼみ

 53歳の女性です。20年くらい前から、舌にできる違和感のあるくぼみに悩まされています。口内炎なのかどうか分かりません。舌に円形のくぼみができて、徐々に大きくなり、2~3週間周期で消えていきます。できては消えの繰り返しです。痛みはないのですが、舌の表面が赤くつるんとしてきて、そこだけ苔(こけ)のような白さがなくなり、違和感があります。治す方法はないでしょうか。20年前に内科を受診したときには、ベーチェット病の可能性があると言われたこともあります。でも、痛みは全くないので、違うと思いたいのですが…。



【答え】 良性移動性舌炎(地図状舌) -局所的刺激や偏食避ける-

伊月病院 細井 恵美子(徳島市徳島町2丁目)

 質問の女性の症状は、良性移動性舌炎と思われます。

 健康な舌の上側の表面は、舌乳頭という小さい突起でびっしり覆われており、しっとりした滑らかな白い苔が生えているようにみえますが、これが部分的に萎縮(いしゅく)・消失し、平たんでつるつるした赤い陥凹斑(かんおうはん)になってしまう状態です。

 赤い陥凹斑が融合、拡大、消失を繰り返し、あたかも移動するようにみえます。形が整っておらず、地図のように見えることもあるので、地図状舌とも呼ばれます。

 不快感、違和感が主な症状で、痛みを伴うことはまれです。良性の病変で自然に治りますが、繰り返し起こることがあります。

 原因は、熱い食べ物、香辛料、アルコール、たばこなどによる舌の局所的な刺激だと考えられます。また、アレルギーも一因と考えられていますが、残念ながらまだよく分かっていません。従って、効果的な治療法も、これといってありません。舌の局所的な刺激や、偏った食生活を避けるようにしてみてください。

 さて、ベーチェット病は、口腔(こうくう)内のアフタ性潰瘍(かいよう)、蓄膿(ちくのう)性虹彩炎(こうさいえん)、外陰部潰瘍を主症状とする慢性の疾患です。この場合の口腔内の潰瘍は、底に厚い白苔の付着するだ円形の潰瘍で、痛みがあり、唇、歯肉、ほおの裏の粘膜、舌、のどに繰り返しできます。従って、あなたの場合は、ベーチェット病の可能性は少ないように思われます。

 最後に、舌の外観について、少し説明しておきましょう。

 舌の表面の細胞は、絶えず新しく生まれ、入れ替わっています。寿命がきた細胞は、食事のときの舌の運動によりこすりとられ、唾液(だえき)で洗い流されます。

 健康な舌の表面は、冒頭でも述べましたように、滑らかで薄い白苔に覆われています。

 ところが、発熱、脱水や口呼吸などにより、口の中が乾燥したり、抗生物質を投与されて消化管の細菌(口や腸の中にはいろいろな細菌が住んでいます)のバランスが崩れたりすると、舌乳頭の間に食べ物のかすや細菌が入り込み、はがれ落ちた粘膜細胞も混じって、舌の表面に厚い苔(舌苔(ぜったい))が生じます。灰色、黒色、黄色、暗緑色など、いろいろな色になりますが、これは食べ物、細菌が作る色素、たばこなどにより着色されるためです。

 逆に白苔が消失し、舌全体が赤く薄くなってしまうこともあります。これは、ビタミンや鉄の欠乏症、消化吸収障害などの全身性疾患に伴って起こります。このように舌は、体調のバロメーターになることがありますので、日ごろから自分で観察する習慣を付けるとよいでしょう。

徳島新聞2004年4月18日号より転載

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