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【質問】 農作業や冷房で咳込む

 77歳になる母は、以前は丈夫な体質でしたが、ここ2~3年、老人性の喘息(ぜんそく)になり、時々、発作が起きています。農作業をしたり、冷房の部屋に入ったりしたときに、急に咳(せき)込んで苦しんでいます。発作が出ないときも、息が苦しそうです。これまでに扁桃腺(へんとうせん)が腫れて寝込んだことが何回かあるそうですが、関係しているのでしょうか。3人産んだ子どものうち、2人が小児喘息でしたが、いずれも完治しています。母が喘息になるような因子を持っていたのでしょうか。病院で処方された薬は楽になるものの、手が震える症状が出ます。続けて大丈夫でしょうか。楽に治す方法や、食事、生活の具体的な仕方などを教えてください。



【答え】 高齢者の気管支喘息 -ステロイドなど中心に治療-

島田内科 島田 久夫(徳島市川内町平石)

 喘息診断の目安は、患者の年齢にかかわらず、大きく変わることはありません。すなわち、<1>発作性の咳や呼吸困難が反復する<2>自然に、または治療により改善する(可逆性)<3>ささいな原因で発作が起こる(過敏性)<4>気管支粘膜に慢性炎症が存在する-ことなどで、アレルギーの存在は関係しません。

 具体的には、夜間から早朝によく症状が表れ、運動後や風邪をひいた後に、ほこり、冷気、たばこの煙の吸入などによって、呼吸時に「ゼーゼー、ヒューヒュー」という喘鳴(ぜんめい)が起こったり、咳、呼吸困難が出現しやすいのです。高齢者にとっては慢性閉塞性(へいそくせい)肺疾患(COPD)や、心臓病の合併も考慮の必要があり、治療においては重要です。患者は、75歳前後というかなりの高齢発症で、高齢発症型喘息と呼ぶこともできます。

 最近の調査では、成人喘息の通院患者の中で、60歳以上が35%を超えていました。今後とも高齢者喘息、あるいは高齢発症型喘息は増加するでしょう。

 高齢者の肺機能面からの特徴は、<1>発作がないときにも、肺機能の改善が不完全のことが多い<2>加齢変化によって、末梢気道(まっしょうきどう)が生理的に閉塞する<3>気道過敏性は健常な高齢者ではみられないが、高齢者喘息の患者では明らかに認められる-などです。

 これらを総合して高齢者喘息ほど、低レベルの気道炎症でも、強い呼吸困難を示すと考えられます。年齢を重ねるにつれて、発作がないときでも、呼吸が苦しそうにみえたりすることもあるでしょう。また、気管支拡張剤の内服や吸入で、本人は随分と楽になったと感じても、検査をしてみると、わずかな改善しかなかった例も数多くあります。

 小児喘息は、アトピー素因との関連が多いのですが、高齢者喘息では、非アトピー性が多く、気道過敏性素因とは別個の動きを示し、両者は別々の遺伝形式をとると考えられています。小児喘息は、80%が成長とともに改善しますが、完治したのではなく、高齢になって再発する可能性もあります。

 高齢になって喘息になる因子を持っていたかどうかは、よく分かりません。扁桃腺と喘息との関係はありません。

 治療は、小児や若年成人と同様で、吸入ステロイドと気管支拡張剤が中心になります。気管支拡張剤の中にβ(ベータ)2刺激剤があり、手先が震える副作用が表れることがあります。薬が効いている証拠とも考えられるので、苦痛がなければ、続けても支障はありません。

 楽に治す方法は?との質問ですが、主治医と薬を信頼して、治療を根気よく続けるしかありません。喘息症状がゼロの状態を続けることが最大の目標です。

 日常生活の注意点は<1>満腹にしない<2>長湯しない<3>ほこりや煙を出さない<4>エアコンは最低限にする-などです。風邪をひいたかなと思ったら自己診断しないで必ず受診してください。湿布や座薬、内服薬で、喘息発作を起こすこともありますので注意しましょう。

徳島新聞2003年8月31日号より転載

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