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【質問】 体にしびれ、こわばり感

 41歳になる女性です。3年ほど前から、朝目覚めたときに、体のしびれ感があります。初めは下側になっている方の腕や下半身だけでしたが、最近は両腕、全身がしびれて、起きたときは、体がぎくしゃくします。腰や背中がこわばっていることもあります。しびれ感は、10分ほどで消えますが、日中、何かにもたれかかり、足を組んだりすると、すぐにしびれ・こわばりが起きます。手の指を組んでも、じきにこわばってガチガチになります。整形外科で検査を受けたところ、リウマチ因子74(正常35以下)でした。医者にはかかっていません。以前から両腕にレイノー病の疑いもあります。普段の生活で何に気を付ければいいでしょうか。



【答え】 関節リウマチ -適切な運動・安静が基本-

徳島健生病院 リウマチセンター 四宮 文男(徳島市下助任町4丁目)

 朝起きたときに、手指のこわばり・しびれがあり、関節リウマチではないかと心配して、受診する患者が最近、増えてきました。関節リウマチが大変な病気であることや、「朝のこわばり」が初期症状であることがよく知られてきたためです。健康を維持していく上では喜ばしいことです。

 しかし、心配し過ぎるのは考えものです。手のこわばり・しびれの原因は、ほかにもたくさんあります。多い原因の一つが手指の腱鞘(けんしょう)炎。いわゆる「使い痛め」で腱の袋が炎症を起こします。

 日ごろ、体を動かしていない人が、激しい仕事やスポーツをした翌朝には、こわばることがあります。また、家事程度の仕事も含めて、手を毎日使用しているだけでも、慢性の腱鞘炎は起きます。手や足の血液の流れが悪くなっても、しびれ・こわばりは出てきます。

 中高年の女性によく見られる症状です。毎日適当な運動を心掛けることが一番大切です。血液の流れが悪くならないように、保温にも注意しましょう。自律神経のバランスが乱れても、同じような症状が出ます。心の悩みは取り除き、楽しい家庭や職場をつくっていくことも不可欠です。

 ただし、四肢のしびれが1日中続き、手や足が動かしにくい神経麻痺(まひ)の症状があるときは、脊髄(せきずい)や神経の病気が疑われるので、専門的な診断・治療が必要です。

 「リウマチが心配」という患者に、もうひとつ多いのが「関節痛があり血液検査をしてもらったら、反応が陽性でリウマチといわれた」という人たちです。リウマトイド因子は、健康な人でも数十人に一人は陽性反応が出ます。肝臓病や血液の病気を持っている人はもっと高い頻度です。

 逆に本物の関節リウマチ患者でも、五人に一人は反応がマイナスです。抗核抗体などの膠原(こうげん)病の因子も、健康な人でも陽性に出ることは少なくありません。血液検査だけで診断するのは正しくありません。

 寒冷にさらされると手指が白くなるレイノー現象は、関節リウマチをはじめとした膠原病の症状の一つです。しかし、関節リウマチの一番の症状は関節痛もさることながら、関節の3カ所以上にしばしば左右対称性の腫れが、1カ月以上持続することです。関節の腫れがなければ、関節リウマチとは診断できません。手や足の指に腫れがないかどうか、まず自分自身で確認してみてください。

 症状が続くようであれば、早めに診察と検査を受けてください。本物の関節リウマチと診断されたときには、早く治療を開始することです。民間療法だけに頼るのは感心しません。

 昨年から、慢性関節リウマチは「関節リウマチ」という病名に変わりました。「慢性」がついていると、治らない印象を与えてしまうのが一番の理由です。

 適切な治療をしないと、寝たきりになってしまう大変な病気です。現在でも、医学的には完治する病気ではありませんが、適切な治療を早期に開始すれば、患者自身は治ったと感じるくらい良くなる病気に変わりつつあります。

 基本は自らの養生、適切な運動と安静。そしてリハビリや薬物療法。数年以内に、さらに有力な薬が使用できるようになります。進行した場合、手術療法も必要ですが、根気よく治療を続ければ、社会や家庭での日常生活を支障なく続けることは夢ではありません。

徳島新聞2003年7月20日号より転載

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