徳島県医師会 トップページへ

  • 文字サイズ標準
  • 文字サイズ拡大
文字サイズ変更について
県民の皆さまへ

【質問】 歩くたびに腰から音が・・・

 64歳の女性です。25年前、ぎっくり腰になり、それから10年余り腰痛に苦しみました。鍼灸(しんきゅう)、整体、指圧などさまざまな治療をしたところ、何が適したか分かりませんが、ここ10年ほどは腰のだるさや痛みを忘れかけていました。しかし、最近、歩くたびに腰(右腰)から「グビッ、グビッ」と音がします。手で腰をたたくか、一休みすると音がしなくなります。痛みは全然ありません。また、冷え込むと右膝(ひざ)に違和感があります。履物の底の外側がすり減るのも気になります。よくウオーキングに参加しますが、このまま続けても大丈夫でしょうか?



【答え】 ウォーキング -無理のない程度に続けて-

稲次整形外科病院 岩佐 悟(板野郡愛住町笠木)

 結論から言いますと、足腰の具合に関しては整形外科医のメディカルチェックを受け、具体的な指導のもとウオーキングを続けられることを勧めます。

 10年余り腰痛に苦しんだとのことで、とても辛かったと思います。しかし、その後は腰のだるさや痛みも忘れかけていたとのことから、重大な異常や基礎疾患はないと思われます。

 腰の「グビッ、グビッ」という音ですが、この音がどこから発生しているのでしょうか?皮下組織、筋肉、椎間(ついかん)関節など腰の骨や軟骨、腹部内臓臓器といろいろ考えられますが、実際に診察してみないと分かりません。痛みやしびれなど、音以外の症状がなければそれほど気にしなくても良いと思われますが、一度は整形外科を受診してみたらどうでしょうか。

 履物の底の外側がすり減っているのは、足がO脚になっているものと思われます。これは変形性膝関節症が疑われます。もしそうであるなら、ウオーキングは慎重に行う必要があります。また、冷え込むと違和感があるとのことですので、今後は夏場の冷房や冬場の寒さなどで膝を冷やさないように注意することが大切です。

 これからはウオーキングの効果や注意点を書きます。ウオーキングの効果については、少し大またで、腕をふり、息が少し弾む程度のスピードで歩くことで足腰のみならず全身を鍛え、心臓や肺を強くし、血管や骨も丈夫にすることができます。実験では、血圧やLDLコレステロール(悪玉コレステロール)を下げたり、HDLコレステロール(善玉コレステロール)を上げたりする効果が認められています。また、中性脂肪や血糖値を下げたり、体重を減らしたりする効果もあります。したがって、歩くことが、高血圧や高脂血症、糖尿病、肥満など生活習慣病の予防や治療の助けとなりうるのです。

 また、整形外科的には足腰の筋肉が鍛えられることで、腰痛の予防や転倒予防にもつながります。さらに、ストレスを解消したり、疲れにくい体をつくったり、抵抗力をつけたり、脳を活性化したりもします。

 このように、ウオーキングにはいくつもの良い効果があります。厚生労働省が健康増進のために数値目標を定めた「健康日本21」では、1日平均歩数として男性9200歩、女性8300歩を推奨しています。しかし、このウオーキングが原因で足腰に痛みを生じることも多いのです。これは歩き過ぎによるものです。

 足腰に適度なストレスをかけることは必要ですが、自分が耐えられる以上のストレス(重み、冷え、疲れなど)がかかると、痛みの原因となります。自分の体調に注意し、また天候や路面の状態、歩行距離、靴など環境にも十分配慮しながら、無理のないウオーキングを続けましょう。

徳島新聞2003年4月27日号より転載

© TOKUSHIMA MEDICAL ASSOCIATION.