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【質問】 手が上がらず、力が入らない

 54歳の主婦です。五十肩について相談します。手が上がらず、後ろに回すこともできず、肩や腕が痛み、だるく、力も入らなくて、夜は痛みで何度となく飛び起きます。家事は続けていますが、安静にしておく方がいいのでしょうか。人の話では手術でよくなったとか、病院へ行かなくても運動すればよくなったとか。治りが早い人、反対に何年もかかる人もいるようです。五十肩はどんな病気ですか。再発するのでしょうか。また五十肩にならないための生活上の注意点や、痛みを和らげるにはどうすればいいのか教えてください。



【答え】 五十肩 -動かしながら温める-

長岡整形外科 院長 長岡 勇(徳島市南前川町4丁目)

 五十肩は、中年期以後に肩関節の周囲に炎症が起こり、痛くなったり動かしにくくなったりする病気です。専門的には肩関節周囲炎と診断します。英語では凍結肩と呼ばれています。

 年齢と非常に関係がありますので、40歳代の方は四十肩、50歳代では五十肩と呼ばれます。まれに60歳以上で発症したり、不幸にも何度も再発したりする方もいます。適切な治療をすれば、やがて治る予後良好な病気です。

 五十肩は、普段あまり運動しない方に多く発症する傾向があります。原因は明らかでないケースが多く、普段しない無理な動きをしたときや、何かの病気で長く寝込んで肩を動かさないと起こることもあります。五十肩にならないためには毎日、適度な肩の運動が大切です。

 初期の症状は、肩関節の周囲の痛みです。腕や首の方まで広がって感じられることもあります。腕を動かすのがつらく、夜中に痛みで目が覚めてしまうこともあります。

 痛みの強い数日間は、炎症を鎮めるために安静にします。三角布での固定や、寝るときに、ひじの下にまくらなどを敷くと痛みが軽減します。痛いときは鎮痛消炎剤を服用したり、座薬を用いたりします。局所麻酔剤とステロイド剤の関節内注射が極めて有効です。しかし、糖尿病、胃潰瘍(かいよう)などがあると使えません。

 この時期は、短時間の冷湿布を行うこともありますが、最近は主に鎮痛消炎剤の湿布をします。電気療法にも痛みを和らげる効果があります。

 1週間程度の痛みの強い時期を過ぎると、周囲の組織が癒着によって固くなり、腕を上げる動作、髪を洗う動作、腰の後ろに手を回す動作などが困難になってきます。

 この時期になると、痛みがあっても肩を動かすようにします。動かしながら治す方が早く治るからです。しかし、痛みがあると効果的な運動ができにくいので、整形外科では関節内注射や電気療法、温熱療法を行った後に運動療法に移ります。家庭では入浴中やその直後に行うと効果的です。家事は、痛みが強くならない範囲で工夫しながら行うことをお勧めします。

 五十肩は、肩を冷やすことで悪化します。夜具や保温用サポーターなどで保護します。温湿布も有効です。かぶれる方は、鎮痛消炎剤の湿布がこの時期でも有効です。使い捨てカイロなどを併用します。

 ほとんどの五十肩は、こうした療法で早期に治ります。五十肩の痛みは放っておいても2年ほどで自然に治ってしまうといわれています。痛みはなくなっても腕が上げられない症状が残る場合があります。適切な療法を受けて、早く治すのが賢明です。

 肩の痛みの原因が五十肩以外の場合や、手術が必要な病気の場合もあります。このため早めに整形外科を受診されることをお勧めします。

徳島新聞2001年11月25日号より転載

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