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【質問】 指の関節が変形、生活に支障

 82歳の男性です。6年前から右手の人さし指の第1関節が曲がり始め、次第に親指の方に曲がっています。今では人さし指と親指を使う手作業、例えば草むしり、字を書く、はしを持つ、などが不自由になりました。また、両手小指も2年前から外側に向かって曲がり始めました。痛みはありませんが、右の人さし指の方は、冬になると痛みます。次に、わき毛のことですが、左右ともいつの間にか抜けています。指の異常と関連があるのでしょうか。2年余り前に整形外科で診察を受けましたが、原因は分からないとのことでした。



【答え】 ヘバーデン結節 -女性に多く中高年で発症-

阿南整形外科医院 院長 門家 純一(阿南市富岡町木松)

 手指の第一関節の変形や痛みを来す疾患には、ヘバーデン結節、慢性関節リューマチ、乾癬(かんせん)性関節炎、石灰沈着性関節炎、痛風などがあります。

 質問の内容には、血液検査のことは書いてありませんが、慢性関節リューマチ、痛風などは血液検査で容易に診断され、皮膚症状としての乾癬を認めれば、当然、乾癬性関節炎を疑います。痛風や石灰沈着性関節炎は耐え難い激痛を起こします。念のために、血液検査(リューマチテスト、赤沈値、CRP、末しょう血液一般検査、尿酸値など)をお勧めします。

 相談の文面からは、ヘバーデン結節でないかと思われます。この疾患は、ほかに合併症がない限り、赤沈値、末しょう血液一般検査、血清学的検査に異常は認めません。

 これは、第一関節の骨関節炎で、発症年齢はだいたい45歳以上で、平均すると55~56歳。男女比は1対10と圧倒的に女性に多く、男性は発症の平均年齢が高くなる傾向です。家族内発生や遺伝性もあるようですが、はっきりしていないようです。ただ、母娘、姉妹間では高率に認められています。

 発症の仕方に2通りあります。1つは、外傷に引き続いて起こる場合(この場合、年齢は不定で、ヘバーデン結節と分けて考えている人もあります)、もう1つは特発性に発生する場合です。生活歴では、外傷性のものは除外して、手を使っての重労働者や裁縫、農業など手仕事をよくしていた人に多いといわれていました。

 また、給食の調理員に多く、職業病と認定を受けたケースがあるようです。一方、八割が主婦であるという報告もあり、必ずしも、手指の使用頻度とは関係ないのかもしれません。


病歴約3年のヘバーデン結節(「整形外科診療図譜」から)
 手指の変形の型は屈曲変形、側方への曲がりと多様ですが、いずれも第一関節に骨性の盛り上がりがあり、時に柔らかい腫(は)れを伴うことがあります。これらはそれぞれ骨棘(こっきょく)、粘液のう胞と呼ばれています。〈写真〉は中指の親指の方への曲がりが顕著です。

 どの指にかかりやすいかの調査では、示指(人さし指=78%)、中指、小指、環指(くすり指)、母指(親指)の順に多いと報告されています。

 診断は、年齢、性、病歴、臨床症状、エックス線所見によって容易です。

 治療は、関節炎症状の強い時は、非ステロイド消炎鎮痛剤の投与や軟こう塗布を施し、炎症がなくなれば、温熱療法や運動療法がよく行われます。急性期には副子固定(局所を小さなアルミ板で固定させる)、ステロイドの関節内注射が行われますが、一般的でありません。

 治療の有無にかかわらず、一定期間で無痛性となり、多少の変形を残して症状固定します。変形、関節の動揺性が著しく、日常生活に支障のある場合、第一関節の関節形成術、固定術、粘液のう胞と骨棘の切除がありますが、ほとんどが手術療法には至らないようです。

 さて、わき毛の脱落のことですが、ヘバーデン結節は、原因について不明な点が多く、内分泌障害、循環障害、神経障害が考えられており、多少関連があるかもしれませんが、むしろ加齢による生理現象と考えた方が妥当ではないでしょうか。

徳島新聞1999年9月19日号より転載

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