【質問】子どもの予防策教えて
今夏は例年に増して猛暑になると予想されています。10歳と6歳の子どもが熱中症にならないか心配です。私は30代の父親ですが、炎天下でテニスをした際に水分補給を怠り、頭が割れるような頭痛に襲われた経験があります。大人でもそうですから、子どもならなおさら注意が必要でしょう。予防策として、特に子どもが気を付けるべきことを教えてください。
城東整形外科内科 岡田博子副院長
【答え】体調や表情をよく観察
6月の1カ月間で、熱中症のため救急搬送された方は全国で4200人超。昨年同月の2・2倍に相当します。
熱中症とは「熱い環境で生じる体の不調」のことです。2012年の熱中症救急搬送者を年代別にみると、高齢者と18歳未満で全体の6割近くを占めています。高齢者と子どもは気温の変化に対し体温を調節する発汗機能が弱いため、周囲が異変に気付くのが遅れると重症化することもあります。
熱中症は次のようにⅠ度からⅢ度の病型に分類されます。
[Ⅰ度]<1>熱痙攣(けいれん)=大量の発汗によるナトリウムの欠乏、筋肉の痛み、硬直<2>熱失神=全身の血液量低下で脳への血液量が一時的に減少することによる立ちくらみ、失神[Ⅱ度]熱疲労=大量の発汗に伴う頭痛、吐き気、倦(けん)怠(たい)感[Ⅲ度]熱射病=脳の体温調節消失、発汗停止、ひきつけ、意識障害。
Ⅰ度の状態では、水分補給や休息での対応が可能ですが、Ⅱ度では輸液治療、またⅢ度では生命の危険を伴うため、3次医療機関への救急搬送が必要です。
原因は、外気温が高いことだけではなく、湿度や風の強さ、日差しにも影響を受けます。夏季だけとは限らず、寝不足や風邪気味など体調にも左右されます。
ご質問の方がテニス中に頭が割れるような痛みに襲われたのも、脳への血流低下と大量の発汗のためと思われます。
熱中症を疑ったら、まずは<1>体の冷却<2>水分と塩分の補給-をしましょう。衣類を緩め、うちわや扇風機で風を送り、冷えたペットボトルや保冷剤で首元や脇の下、鼠(そ)径部を冷やしましょう。スポーツ飲料や食塩水(500ccの水に、ひとつまみの食塩)を飲みましょう。
夏場の運動、労働中には20~30分ごとの水分摂取をお勧めします。一気に水分を取るのではなく、こまめに飲む(体重40キロ以下なら1回150ミリリットル、60キロ以上なら300~360ミリリットル)ことが効果的です。
ご質問は、お子さまの熱中症予防策ということですが、子どもは大人と違い体の中の水分が多いため、発熱や食欲低下ですぐに脱水を起こします。そもそも子どもと大人では、体重当たりの一日に必要な水分量が違います。
また、お子さまの体調や表情をよく観察することも大切です。<1>いつもより顔が赤いときは熱中症の前段階が考えられるため、体を冷やしてあげましょう<2>いつもより大量の汗をかいている場合は要注意です。体温が上昇していると考え、涼しい場所で十分休ませてあげましょう。
服装は通気性や吸収性のあるものを選び、帽子をかぶりましょう。子どもは大人より地面に近い高さで生活をしているので、アスファルトの照り返しも強いはずです。気温が30度以上、湿度が60%以上のときは外出を控え、日ごろから暑さに慣れるようにすることも大切です。
エアコンは「室温28度、湿度60%以下」を目安にしましょう。冷気は下にたまるため、大人目線で温度を設定すると子どもには寒すぎます。意識障害はもちろん、嘔(おう)吐(と)や応答が鈍いときは医療機関を受診しましょう。解熱剤は、むしろ危険です。
外気温が皮膚温より高い条件では、発汗機能の未熟な子どもは深部体温が上昇し、熱がこもりやすくなります。大人が暑いと感じたら、子どもはもっと暑いはず。大切なのはお子さまが出す熱中症のサインを見逃さないことです。そのためには日ごろから、お子さまの顔色、食欲、機嫌などをチェックしておくことが必要です。大人が気を付けて、熱中症から子どもを守りましょう。