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【質問】右足の親指が他の指に重なる

 長年、足の親指が外側(小指側)に曲がって変形した外反母趾(ぼし)に悩む60代女性です。10年前に発症した時は親指の付け根に強い痛みがありました。最近は、たまに痛みに似た違和感がある程度ですが、右足の親指の付け根がひどく出っ張り、親指が他の指の上に乗ってきています。見た目も悪く、手術をして骨の出っ張りを取り除きたいのですが、どの程度の症状で手術可能でしょうか。手術方法や他の治療法を教えてください。

 

齋藤整形外科  齋藤慎一郎 先生

 【答え】骨を切り、変形を直し固定

 外反母趾は、つま先に負担の掛かるハイヒールや窮屈な靴による圧迫、筋力低下など、さまざまな原因が組み合わさって発症するといわれています。痛みがある場合、足の親指の変形で突出した部分に炎症が起きていると考えられます。治療法は装具を着けることのほか、体操や運動、痛み止め薬の使用、手術などがあります。

 装具の種類は、親指を内側(反対の足側)に引っ張るベルトのような道具や靴の中敷き(足底板)などさまざまです。包帯やサポーターで親指の根元が飛び出した部分の足首側を巻いて圧迫する方法もあります。偏平足を合併している人は足の甲を圧迫することで変形が改善し、痛みが軽減することもあります。

 運動による治療法では、両足の親指に引っ掛けたゴムひもを引っ張ることにより、変形を戻そうとする「ホーマン体操」が有名です。指の力を付けるため、足指でタオルをたぐり寄せる運動も有効。飲み薬や塗り薬、シップのような貼り薬なども使われます。

 痛みに対しては、これらの治療による効果が期待できますが、変形が進むと運動することによって、さらに外反母趾を進行させてしまいます。ある程度進んだ変形を戻すには手術以外では難しいことが多く、ご相談のように指が重なるほど変形して痛みがあるときは手術を行います。

 どのような状態であれば手術ができるのか、特にはっきりとした決まりはありません。軽度の変形でも痛みがあり装具や薬で改善しない、変形のため靴が履きにくい、見た目が気になる、といったケースで手術することがあります。

 手術方法は100種類以上あるといわれています。患者さんによって変形の程度や症状は異なるため、どの手術が適しているかは足の状態と患者さんの希望を聞きながら決めます。

 基本的には中足骨(ちゅうそくこつ)という足の甲にある骨を切って変形を戻し、スクリューやワイヤで固定します。変形が強い場合、中足骨の根元(足首に近い側)で骨を切って親指をまっすぐな状態に近づけます<写真参照>。

 手術方法や症状、両足か片足かなどによりますが、術後数日でかかとに体重が掛かる靴を履いて、つえ歩行を始めます。1カ月半~2カ月でつえがなくても歩けるようになり、順調にいけば3~6カ月で運動もできるようになってきます。

 ただし、手術で変形が改善しても再発したり、逆に内側に曲がる変形を起こしたりすることもあるので、術後の靴選びや装具の使用、リハビリテーションが重要です。外反母趾の治療は手術をすれば終わりでなく、経過も千差万別。治療を受ける際には主治医と十分に相談し、合併症や再発について納得した上で行ってください。

【写真説明】[上]親指が変形して曲がった足[下]スクリューやワイヤで固定する手術後。親指の変形がまっすぐになった(齋藤副院長提供)
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