徳島県小児科医会 日浦恭一
旅行は日常生活ではできない貴重な体験ができるとても楽しいものです。しかし体力や抵抗力のない乳幼児が住みなれた家庭の外に出ることで身体に大きな影響を受けることがあります。とくに慢性疾患を持つ子どもや急性疾患の病気直後では注意が要ります。
短時間で目的地に到着できる飛行機はとても優れた交通手段です。飛行機は健康な子どもにはほとんど影響はありませんが、機内の気圧が地上よりも低くなりますからチアノーゼや低酸素血症を持つ心臓病の子どもでは負担が大きくなることがあります。
列車でも飛行機でも限られた空間に大勢の人が密集している場所では伝染力の強い感染症が問題になります。とくにこれから冬場にはインフルエンザやウイルス性胃腸炎が多くなります。乗客の中に患者さんが紛れ込んでいると、遠隔地の感染症でも短時間で他の地域に流行を運んでしまいます。
子どもが発熱している時や咳がひどい時、嘔吐や下痢が頻回に見られる場合には移動を見合わせるべきです。旅行中には治療はもちろん水分補給や食事療法もいつものようにはできません。また嘔吐物や下痢便の処理も限られた場所で行うのは大変です。
インフルエンザウイルスやロタウイルス、ノロウイルスは伝染力が強く感染性の危険が高いものです。急性期の症状が取れても長くウイルスが排出されることがあります。
旅行に出かけるのは感染症の治癒と完全に体力が回復してからにしましょう。
徳島新聞2011年12月28日掲載