徳島県小児科医会 日浦恭一
朝ごはんを食べない子どもが増えています。朝ごはんで摂取する栄養が不足すると、学業成績や体力の低下につながります。
ヒトの脳や赤血球はブドウ糖だけをエネルギー源として利用します。ブドウ糖は食事で摂取する糖質から補給されます。食事と食事の間隔が一番長い夜間には活動量が低下していますから、それほどエネルギーが不足することはありません。しかし、大量にエネルギーを消費する昼間の活動を支えているのは朝食から摂取する糖質ですから、朝食の役割は特に重要です。
食事と食事の間、空腹時に必要なエネルギーは肝臓に貯えられたグリコーゲンが利用されます。空腹時には肝臓のグリコーゲンが速やかに誘導されてブドウ糖に変換されます。
しかし肝臓に貯えられたグリコーゲンの量は成人でも約50gしかなく、脳や赤血球のエネルギー源として利用できるのは6~8時間が限度と言われます。
肝臓に貯えられたグリコーゲンが枯渇した後は脂肪組織や筋肉組織がエネルギー源として利用されます。脂肪が分解してブドウ糖を作るには時間がかかり、筋肉のタンパクを分解してアミノ酸から肝臓でブドウ糖を合成するほうが早いとされます。
しかしブドウ糖合成のために筋肉が利用されるのは身体にとっては危機なので、食事を求めて食欲中枢が強く刺激されます。その結果、攻撃的な行動が見られ、排他的になり、イライラ落ち着きがない状態になります。最近の子どもがキレ易いのは食事習慣と関係があるのかも知れません。
徳島新聞2011年10月19日掲載