徳島県小児科医会 日浦恭一
テレビやビデオ、パソコンやケータイなどの電子機器の発達は目覚ましいものがあります。最近の親は生まれた時からこれらの機器に囲まれて育った世代です。育児中にテレビが点いているとかケータイを打ちながら授乳している母親が居るかも知れません。
愛着の形成は新生児の微笑みかけを周囲の養育者が受け止めることに始まります。子どもの微笑みかけに母親が微笑み返すことで互いの愛着が形成されます。授乳中や世話をしている時に互いが顔を見合わせることが愛着の形成には大切です。
養育者が日常の世話や適切な関わりを毎日ていねいに積み重なることで子どもと養育者の間の愛着が形成されますから、テレビやケータイの画面に目を向けたまま授乳することや、機械的に開ける乳児の口に反射的に離乳食を入れるだけの育児では母親への愛着は形成されません。テレビやビデオを一日中見せるような子育ても問題です。
テレビやビデオからの信号は一方的に送られてきます。子どもがテレビの画面にいくら微笑みかけても話しかけてもテレビからの反応はありません。
親子の愛着が形成されなかった場合、子どもは環境の変化に対応できにくくなり、人間関係を円滑に進めるのに必要な基本的な信頼感を抱くことが出来ず、また感情を上手にコントロールすることが出来にくくなりなります。人間生活に必要な社会性は親子間の愛着が基礎になって形成されますから、授乳中や育児の間はテレビを消しケータイを横に置くことが大切です。
徳島新聞2011年9月28日掲載