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徳島県小児科医会 日浦恭一

 愛着の形成は新生児の微笑みのように生まれつきプログラムされたものですが、愛着の形成過程にも発達に伴う変化が見られます。



 新生児期から生後8週間位までは愛着の対象は誰にでも向けられます。生後2~7カ月でも対象は誰にでも向けられますが、その対象はなじみのある人物となじみのない人物で区別されるようになります。

 さらに生後7カ月から2~3歳ころは愛着がより強固になる時期です。人の識別が出来るようになって、特定の人物に対する愛着行動が明らかになります。さらに大きくなると後追いをして常に母親のすぐ近くにいるようになります。また見知らぬ人に対しては人見知りが始まります。

 このように愛着が確立すると、母親と一緒であれば初めての場所でも不安を感じることなく動き回ることが出来ます。また少し離れていても、母親が目に見える範囲にいれば安心して遊んでいられるようになります。子どもにとって母親は安全基地として使用されます。母親から少し離れて探検に出かけ、不安や脅威を感じた時には安全基地に戻ってきます。落ち着きを取り戻すと、再び探検に出かけます。

 このように養育者との間に愛着が形成されると、子どもの精神面の発達が安定します。愛着は認知機能や対人関係、感情のコントロールなどに影響しますから、愛着形成の時期に不適切な取り扱いを受けた子どもは様々な支障を来すと考えられます。適切な愛着の形成が子どもの正常な精神発達を促すのです。

徳島新聞2011年9月21日掲載

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