徳島県小児科医会 日浦恭一
生まれたばかりの新生児はよく微笑みます。この笑顔を見た両親は子どもを育てる気持ちが強くなります。新生児期から乳児期早期には誰に対してもニコニコ微笑みかけます。この微笑みかけに対して周囲の養育者が反応することで子どもと養育者の間に愛着が形成されます。このような新生児の微笑みは生まれながらにプログラムされたものです。
新生児の微笑みを最も多く目にするのは日常の世話をしている母親です。授乳中に顔を合わせると乳児は母親に微笑みかけます。これを見た母親も微笑みを返します。その結果、母親には育児に対する行動の強い動機が発生し、子どもには安心感が芽生えます。
新生児期に見られる微笑みかけは生後8週ころまで、誰に対しても見られます。
生後8週から生後7カ月になると同じように誰に対しても微笑みかけが見られますが、その対象がなじみのある人物となじみのない人物で区別されるようになります。なじみのある人物には微笑みかけや話しかけることが増えてきます。
子どもの愛着行動には微笑みかけることの他に泣くことや話しかけることもあります。さらに大きくなると顔を見つめること、近づいていくこと、後ろをついていくこと、抱きつくこと、よじ登ること、まとわりつくことなどの行動が増えてきます。
子どもは愛着行動をとることによって養育者の注意を惹き、自分の傍らに引きつけておき、養育者からの世話を効果的に引き出すことが出来るようになります。
徳島新聞2011年9月14日掲載