徳島県小児科医会 日浦恭一
食中毒の原因菌の中で大腸菌はサルモネラ菌、カンピロバクター菌、黄色ブドウ球菌などに次いで多い細菌です。
大腸菌の中にはベロ毒素と云う病原性を持つ細菌があります。このような病原性大腸菌はウシやヒツジの腸管内に一定の割合で存在します。大腸菌に汚染された食物を経口摂取すると食中毒が発生します。病原性大腸菌による食中毒は抵抗力のない乳幼児や高齢者で重症化することがあります。
食中毒は汚染された食肉を食べて3~5日の潜伏期間の後に発病します。症状は腹痛と下痢です。重症の場合、下痢の回数は10回以上で激しい腹痛が反復します。下痢は1日から数日で水様の下痢から血性の下痢に変わり、便成分が少なく血液そのものが吹き出すようになります。血便や腹痛は1~2週間続き、徐々に軽くなっていきます。
下痢が出現して3~7日目に溶血性貧血、血小板減少、急性腎不全などが見られるものを溶血性尿毒症症候群と言います。これは腸管出血性大腸菌の感染症のうち約1割に見られる合併症で、年齢が低いほど発病しやすいと言われます。この時にけいれんや意識障害など中枢神経症状が最初に見られることもあります。
1996年堺市で発生した9,000名を越えるO157による集団食中毒、最近の生牛肉によるO111食中毒、ドイツのO104汚染野菜による食中毒は病原大腸菌による食中毒です。
子どもや老人は抵抗力が弱いので十分加熱した食品を食べることで食中毒予防することが大切です。
徳島新聞2011年7月20日掲載