徳島県小児科医会 日浦恭一
小児科の外来には皮膚に発疹の見られる子どもたちが大勢来ます。発疹には原因疾患がたくさんありますから、診断や取り扱いに悩むことがあります。発疹に発熱をともなう場合にはウイルス感染による疾患が最も疑われますが、その他にも細菌感染、川崎病、膠原病(こうげんびょう)、悪性腫瘍など多くの原因疾患を考えておく必要があります。
発疹の形態だけで原因疾患を特定することは難いものですが、発疹の形態を正しく把握することはとても大切です。
発疹の形態には紅斑(こうはん)、紫斑(しはん)、丘疹(きゅうしん)、水疱、膿疱などがあります。紅斑は皮膚が紅色を呈し圧迫すると消えるものです。紫斑は皮膚の出血斑ですから圧迫しても消えることはありません。紫斑の中で小さいものを点状出血、大きいものを斑状出血と言います。丘疹は盛り上がったものです。水疱は透明な内容液を含んだ皮膚の隆起を示します。内容が濁って見えるものを膿疱と言います。
ウイルス感染で発疹が見られる疾患の代表は麻疹(はしか)です。麻疹の発疹は紅斑です。高熱が3~4日持続した後に、口腔粘膜にコプリック斑と呼ばれる発疹が出現すると間もなく発疹が現れます。
麻疹はワクチンの普及とともに日常診療ではほとんど経験することがなくなりました。ワクチン未接種者やワクチン接種していても、その後、長い年月で免疫が低下した人では麻疹にかかることがあります。発熱と発疹を診た時にはまず麻疹を考えておかねばなりません。
徳島新聞2011年5月11日掲載