徳島県小児科医会 日浦恭一
初夏に流行するウィルス疾患の多くは発熱を特徴として夏かぜと呼ばれます。体力のない子どもが高熱を出すと大変心配になりますが、夏かぜは脱水症や二次的な細菌感染症を起こさなければほとんどが自然に治ります。
多くのウィルス疾患には対症療法以外の特別な治療法はありません。対症療法としては安静、水分補給、解熱剤の投与などで経過観察する訳ですが、高熱を来す疾患の中には重篤な細菌感染症が隠れていることがあります。細菌感染症には出来るだけ早期に適切な抗菌剤療法を行う必要がありますから、鑑別診断が大切となります。
夏かぜを起こす代表的なウィルスにはエンテロウィルスとアデノウィルスの2つがあります。エンテロウィルスはポリオやヘルパンギーナ、手足口病の原因ウィルスです。アデノウィルスは咽頭炎、扁桃炎、咽頭結膜熱(プール熱)、胃腸炎や出血性膀胱炎などの原因となります。
いずれのウィルスも感染して発病すると高熱や咽頭痛が見られます。さらに一度感染すると腸管からウィルスが長く排出されて感染源になります。したがって集団生活や院内感染の原因としては大変重要なウィルスです。
日本の夏は高温多湿で食欲が落ち睡眠が浅くなり疲れが取れにくくなります。寝冷えによる抵抗力の低下もあります。夏かぜウィルスに感染しないように注意が必要です。
徳島新聞2010年7月14日掲載