徳島県小児科医会 日浦恭一
世界では多くの国で子宮頸がん予防のためのヒトパピローマウィルスHPVワクチン接種プログラムが作成されています。接種対象は性的接触のない女子ですから、多くの国では10歳から14歳くらいを対象にプログラムを作成しています。また多くの国ではこのプログラムは公費負担で行われています。
子宮頸がん予防は従来から行われている子宮がん検診と、HPVワクチンの徹底によって完全なものとなります。現在、日本の子宮がん検診の受診率は20%くらいとされます。
子宮頸がんの予防接種は任意接種ですから現状では日本でワクチンの接種率が急速に上昇することは期待できません。
世界の多くの国が国民の健康を守るためにワクチンの定期接種化と公費負担制度を実施しています。子宮頸がんの発生は20歳代から30歳代に多く、HPV感染から数年から十数年後にがんの発生を見る訳ですから、日本は早急に予防措置を講じなければ10年後、20年後にもまだHPV感染による子宮頸がんの発生で苦しんでいることになります。
日本人はワクチンによる副反応に異常に過剰反応して、予防接種行政にとても消極的な態度をとってきました。しかしワクチンで予防できる疾患をそのまま放置することは許されません。ヒブワクチン、肺炎球菌ワクチンとともにHPVワクチンも早期に定期接種化することが望まれます。
徳島新聞2010年5月26日掲載