徳島県小児科医会 日浦恭一
子宮頸がんはヒトパピローマウィルスHPVの感染が原因で発生します。HPVは性的接触で感染するウィルスですが、感染しても症状は見られません。さらにHPV感染数年後に子宮頸部の基底細胞に異常が発生しても何の症状も現れません。従って性交開始年齢以前の思春期にHPV感染による子宮頸がん発生の危険性について、HPVワクチン接種の大切さや、子宮頸がんの検診の重要性などを教育しておくことが大切です。
現在世界の110カ国以上でHPVワクチンが使用されています。日本では昨年の12月にワクチンが発売されて使用できるようになりましたが、HPVに対する知識の乏しさやワクチンが高額であることなどの理由からまだ一般に普及するに至りません。
HPVワクチンの接種対象者は主として10歳以上の女性となっています。ワクチン接種は初回と1ヵ月後、6か月後の3回、筋肉内注射が行われます。
ワクチンの効果はHPV感染に対する予防的なものであって治療ではありません。HPVに持続感染して子宮頸部の基底細胞に異常が発生したものや、前がん状態になってしまったものに治療効果はありません。
そこでHPV感染前のワクチン接種が大切であり、子宮頸がん検診が重要になるのです。これらの内容は思春期までに教育しておく必要があります。
徳島新聞2010年5月19日掲載