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県民の皆さまへ

 咳は子どもが小児科を受診する原因の中で発熱とともに多いものです。咳の原因で多いのは風邪によるものですが、中には重要な疾患が隠れている場合がありますから油断できません。

 今月は子どもによく見られる症状でありながら多くの疾患を含む可能性のある咳についてお話したいと思います。

 咳は元々、気道内の分泌物や異物を排除する生体の防御反応のひとつですから、咳を治療していくときには風邪の咳と決めつけてただ単に咳止め薬を与えるだけでなく、その原因を考えて治療することが大切です。

 咳は気道にある咳受容体が刺激を受けることによって発生します。この受容体は気道の粘膜下にあり気道内の異物、感染症の結果生じた分泌物や化学物質などの刺激を受けて、これが自律神経を介して延髄にある咳中枢を刺激します。

 咳中枢から出る刺激が脊髄神経を介して横隔膜や肋間筋を急激に収縮させることによって咳が発生します。 咳受容体を刺激するものには炎症による刺激、機械的な刺激、化学的な刺激や温度変化による刺激などがあります。

 上気道にある咳の受容体はウィルス感染にともなう分泌物や気道に入った異物など、物理的な刺激に反応しやすく、下気道にある受容体はタバコの煙や刺激のあるガスなど、化学的な刺激に反応しやすいと言われます。

 咳の原因としてもっとも多いものはウィルス感染に伴う咽喉(のど)の炎症です。つまり風邪による咳がもっとも多いのですが、この咳は普通、短期間で自然に治まります。したがって咳を止める薬剤を使用する必要があるかどうかを十分に見極めることが大切です。

 咳は喀痰を排出する役割がありますから、咳による食欲低下や睡眠障害がある場合には咳止めの薬剤を使用しますが、喀痰が多い場合には咳止めのみの薬剤を漫然と使用することには注意を払う必要があります。

2008年5月14日掲載

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