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 子どもの感染症の中でとくに大切なものは神経系の感染症です。中でも髄膜炎は生命の危険性や神経学的後遺症の点で大変重要な疾患です。今月は髄膜炎について考えてみました。

 子どもの神経系感染症の中には髄膜炎、脳炎、脳症などがあります。この中でもっとも頻度が高いのは髄膜炎です。髄膜炎はその原因によってウイルス性、細菌性、結核性に分類されます。結核性髄膜炎は細菌性髄膜炎のひとつですが、その特殊性から一般の細菌性髄膜炎とは別に扱われるのが普通です。

 脳は外側から硬膜、クモ膜、軟膜という3枚の膜に包まれて保護されています。クモ膜と軟膜の間にあるクモ膜腔には脳脊髄液(髄液)が流れています。

 髄液中には白血球などの貪食(どんしょく)細胞が含まれておらず、低タンパクであり補体や免疫グロブリンという免疫に関与する物質が乏しく、細菌が侵入してもこれを排除することが難しいと言われます。また血液と脳の間には自由に物質が通り抜けることができない血液脳関門があって、血液中にあるウイルスや細菌に対する免疫抗体が通過できなくなっています。したがって一度髄液の中に細菌などの微生物が侵入して髄膜炎になると治りにくくなるのです。

 クモ膜腔へ微生物が侵入すると経路にはいくつかあります。まず血液を介して感染するものとして、肺炎や尿路感染症などの病巣から細菌が血液に侵入して血液中の細菌が神経に感染するものがあります。

 また神経系に近いところに感染病巣があって直接浸潤するものには中耳炎や副鼻腔炎、顔面の化膿性病変などが原因になることがあります。

 さらに頭部の開放性骨折などの髄液が漏れるような外傷があると直接神経系に感染が起こることがあります。

 髄膜炎は脳表面の炎症性病変ですから、脳実質がおかされるわけではありません。しかし髄膜炎でも意識障害やけいれんなどが見られることがありますから、髄膜炎と脳炎・脳症とを鑑別することが治療上や後遺症の有無を考慮するときに重要なポイントになります。

2006年4月11日掲載

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