徳島県医師会 トップページへ

  • 文字サイズ標準
  • 文字サイズ拡大
文字サイズ変更について
県民の皆さまへ

 授乳中の女性にとって自分が病気の時、薬物療法が乳児に影響するかどうかは大変気になることです。母乳栄養をしている間は必要な治療を受けられない、母乳を続けたいが服用した薬剤が母乳中へ移行するのが心配、などです。また授乳中の服薬で授乳を中止すべきかどうかも問題になります。多くの薬剤添付文書には授乳中の薬剤服用について、「薬剤服用中は母乳を中止すること」とか「授乳をするなら薬剤を投与しないこと」とかの記載があります。その結果、母親に必要な治療ができずに病気を長引かせたとか、薬剤服用中に母乳を止めている間に母乳が出なくなったなどの不都合が生じます。

 実際に授乳中の女性が服用してはいけない薬は抗がん剤、放射性物質、一部の向精神薬などだけで一般の感冒治療薬や胃腸薬など多くの薬は服用しても乳児に影響はないとされます。授乳を禁止すべき薬剤で治療しなければならない疾患とは、もともと授乳や育児をするのが困難なものばかりです。

 母乳は血液の成分から作られますから、血液に含まれる薬剤の多くは母乳中に分泌されます。しかし母乳中に含まれる薬物の量は服用した薬物の種類や量によって変わります。薬剤の分子量が小さいとか脂溶性であると母乳へ移行しやすく、除放剤などは長時間作用していますから多量に移行する可能性があります。薬剤の血中濃度が高い時に授乳すれば母乳中への移行も増加します。これらのことから長時間作用する薬剤の使用は控える、薬剤服用は授乳の直後にするなどに気をつければ母乳中の薬剤濃度を低下させることができます。母乳中に含まれる薬剤量が乳児の体内で薬理作用を呈する程の濃度まで高くなることはほとんどありません。本当に母親の疾患治療に必要な薬剤のみを短期間使用するのに不都合はありません。治療したいのに必要な治療が受けられないといったストレスでも母乳分泌は悪くなります。薬剤以外のアルコールや喫煙によるニコチン、嗜好品に含まれるカフェインなども乳児に影響することも考えたいものです。

2004年11月23日掲載

© TOKUSHIMA MEDICAL ASSOCIATION.