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 すべての子どもにとって母乳が最も優れた栄養法であることは誰もが認めるところですが、実際に完全母乳栄養を行っている人はそれほど多くありません。母乳が大切なことは理解できても、赤ちゃんの体重が増えないとか母乳を飲んでもすぐに欲しがるので不足しているとの理由でミルクを足している場合が多いのです。

 母乳の利点は栄養学的にすぐれていること、種々の感染防御因子を含んでいること、アレルギーを起こしにくいこと、出産後の母体の回復を早め、母乳育児を通じて母子相互作用の確立に良い影響を及ぼすことなどが挙げられます。

 母乳には子どもの成長に必要な栄養素がバランス良く含まれ、消化吸収が良く、抵抗力の点でもすぐれています。分娩直後に分泌される初乳は感染症に対する防御因子をたくさん含んでいます。とくに免疫グロブリンAは細菌やウィルスに対する抗体を含んでおり腸管での大腸菌やサルモネラ菌の感染予防に役立っています。その他、リンパ救やマクロファージといった細胞成分、ラクトフェリンやリゾチーム、ビフィズス因子などの免疫物質が含まれていて新生児期や乳児期早期の免疫を司っています。その結果、母乳栄養児では人工乳で育てる場合に比べて重症の下痢や肺炎、中耳炎、細菌性髄膜炎、尿路感染症などにかかる率が低いとされます。さらにアトピー性皮膚炎や乳児突然死症候群などさまざまな疾患でも母乳栄養児の方が人工乳で育てられた子どもよりも発生頻度が低いとされます。

 完全母乳育児を行うには小児科医をはじめ助産師、母乳を取り巻く人達の指導や協力が欠かせません。中でも母乳の専門家は助産師です。小児科医は子どもに異常がないか、体重増加から母乳不足がないかを判断します。小児科医が母親の乳房を直接診察することはなかなかできません。母乳不足を感じた時には、自分だけで判断せずに必ず子どもの専門家である小児科医と母乳のプロである助産師に相談するようにしましょう。

2004年11月16日掲載

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