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 出産直後の母親の大部分が母乳育児を希望するにもかかわらず、1ヵ月時点で実際に母乳育児を行っている人の割合は約45%しかないと言われます。これにはさまざまな理由がありますが、母乳に対する知識の少なさが関与しているものと思われますので、正しい母乳に対する知識をもって分娩前から準備しておくことが必要です。今月は母乳について考えてみました。

 母乳育児成功の最大のチャンスは出生直後にあります。この時期の新生児は分娩にともなう強いストレスによって体内のカテコールアミンが上昇し意識中枢が刺激され覚醒状態にあります。従って、出生直後30分以内に乳首を吸わせることができるとその後の母親育児がスムーズに行われるというわけです。これは母子相互作用の中で、母親が新生児に対して愛着を抱くことに大変役に立つからです。このことがその後の母乳分泌にも良い影響をおよぼすと考えられます。しかしこのような覚醒状態は30分から1時間しか持続せず、急速に睡眠に移行します。しがってこの時期に母親の児に対する愛着をスムーズに引き出せるかどうかは、分娩を取り扱う産科スタッフの考え方に左右されるのです。新生児期に安易に哺乳びんを使用することや母乳以外のシロップや人工乳を与えると母乳分泌の妨げになることがあります。健康な新生児に対しては早期に頻回の授乳を行うことで、脱水症などの不都合を起こすことが避けられると言われます。しかし体重の減少が激しいとか黄疸が強いからという理由でミルクを与えると新生児は乳首の混乱を来すと言われます。また母親は乳首を吸われることで母乳分泌ホルモンであるプロラクチンの分泌が促され母乳の分泌が良くなります。従って乳首を吸われることがなければ母親の分泌は悪くなります。

 母乳育児を成功させるためには、出産後1ヵ月くらいは母子ともに授乳の練習時間と考え、新生児に大きな異常がない限りリラックスして育児が行われる環境づくりを心がけることが大切です。

2004年11月9日掲載

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