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 妊娠中の女性が風疹にかかると胎児も風疹にかかります。かかった時期が早ければ風疹ウイルスが胎児の組織細胞を害して、出生時にさまざまな症状が現れます。これを先天性風疹症候群と言います。先天性風疹症候群は先天性の疾患ですが、女性が妊娠中に風疹にかからなければ発生しません。従ってこの病気はワクチンによって予防可能な異常です。1995年の予防接種法改正時にワクチン接種率が低くなった時期があります。現在、この年齢層は風疹に対する抗体保有率が低くなっています。従って今後しばらくはこの年齢層が妊娠可能年齢になっており先天性風疹症候群の発生が問題になっています。

 風疹が春から初夏にかけて流行した年には先天性風疹症候群は秋から冬に発生することが多くなります。妊娠中に風疹にかかると潜伏期の後半に母体の体内ではウイルス血症が起こり次いで胎盤から胎児に感染し、胎児のウイルス血症から胎児の組織器官が感染します。この時、胎児が妊娠の前半で免疫能力が未熟な状態ですと慢性の持続感染が成立し、細胞分裂が抑制され組織器官に永続的な障害をもたらします。この永続感染は新生児期にも一時的な風疹の症状を現すばかりでなく時には生後1年くらいウイルスを排泄し続け、新たな感染源にもなります。

 先天性風疹症候群の代表的な症状は目、心臓、耳の症状です。眼科的症状としては白内障や網膜症、循環器症状として動脈管開存症や肺動脈狭窄症、耳鼻科的症状として感音性難聴がみられます。その他には精神神経学的症状として行動異常、髄膜脳炎、精神遅滞などが挙げられています。これらの症状は妊娠のいつ頃に風疹にかかったかによって出る症状が決まっています。妊娠時期の早いほど症状は強く、妊娠1ヵ月以内なら50%以上に、妊娠2ヵ月以内では20~30%に、妊娠3ヵ月以内なら5%に先天性風疹症候群を認めると言われます。これは風疹ワクチンでも起こる可能性があります。ワクチン接種2ヵ月以内は妊娠する必要があります。

 妊娠する前には自分が風疹に対する免疫を持っているのか知っておくことが大切です。

2004年8月17日掲載

© TOKUSHIMA MEDICAL ASSOCIATION.