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 麻疹ワクチンが定期予防接種に加えられたのは1978(昭和53)年で、それ以降、徐々に麻疹の大流行は見られなくなりました。しかし最近でも麻疹は全国多くの地域で小流行を繰り返しながら時々全国規模の流行が報告されています。そして1年間に50名くらいの子どもたちが麻疹で命を落としていると言われます。また最近では成人の麻疹の報告が増加しています。成人の麻疹は入院を必要とするような重症の麻疹が多いと言われます。

 前回、お話ししたように麻疹にかかるとその症状の重さで体力を消耗し、抵抗力の低下による合併症のために、乳幼児の多くが入院治療を必要とします。麻疹は誰でもかかる病気ですが、麻疹ウイルスに対する有効な治療法がなく、誰もが無事に治るとは限りません。一度かかると抵抗力を獲得して終生、麻疹にはかからないと言われます。しかし麻疹ワクチンで免疫をつけた人は数年で抗体が減少して、ワクチンを接種していても麻疹にかかる人が出てきています。麻疹の大流行がなくなるとワクチンで免疫をつけた人がその免疫を強化する機会がなくなり、自然の麻疹に出合ったときに麻疹に対する免疫がなくなってしまっていることがあるのです。従ってワクチンで免疫を獲得した人と麻疹にまだかかっていない人の割合が増加してきますと時々麻疹の流行が見られるようになるのです。

 従来、生後半年以内の乳児は麻疹に対する抗体を持っており麻疹にはかからないとされてきました。しかし、麻疹ワクチンで免疫をつけた世代が親になるにしたがい、新生児が母親から受ける麻疹に対する移行抗体は非常に少なくなっています。母親の免疫がなければ新生児でも麻疹にかかる可能性はあるのです。成人の麻疹が今後さらに増加することも予想されます。従来、麻疹は子どもの病気でしたが今後は若い世代を中心とした成人の麻疹が発生するものと考えておかねばなりません。

 麻疹ワクチンの問題は現在の1回接種で接種率を向上させることが最も大切ですが、将来に向けて2回接種の準備をしておかなければならない時期にさしかかっているのです。

2004年7月27日掲載

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