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 今月は夏かぜの代表であるアデノウイルス感染症とヘルパンギーナについてお話ししてきました。発熱を主徴とする夏かぜの中には抗生剤療法が必要な細菌感染が隠れている場合がありますが、とくに溶連菌感染を見逃さないようにすることが大切です。

 溶連菌感染症は幼児から学童に好発する細菌感染症で咽頭炎、扁桃炎、中耳炎、肺炎、皮膚化膿症などを起こすことが知られています。中に高熱と全身の発疹を来し猩紅熱(しょうこうねつ)と言われるものもあります。また溶連菌感染症にかかった時に十分な治療をせずに放置すると後に急性腎炎やリウマチ熱など大きな病気の原因になることもあります。

 溶連菌は直接接触や経口摂取、気道分泌物の飛沫などで感染します。溶連菌による咽頭炎・扁桃炎の典型的な経過は、潜伏期間2~5日で急激な39度前後の発熱、咽頭炎、頭痛、腹痛で発病します。扁桃腺や咽頭は腫れて真っ赤になります。舌乳頭も腫れ上がり苺舌と呼ばれる状態になります。半日から1日すると身体に発疹が出現して全身に広がります。合併症がなければ3~5日の経過で治ります。咳や結膜充血がないので一般のかぜやプール熱とは区別でき、外来で簡単に出来る迅速検査キットがあります。

 治療は抗生剤療法です。ほとんどの抗生剤に効果がありますが、短期間で治療を中断すると溶連菌は再び咽頭から出て再発することになります。ペニシリンで10日から2週間の投与が必要とされます。

 かぜの原因の80~90%はウイルスであると言われます。発熱だけを主症状とするウイルス感染症には抗生剤は効果がありません。現在、ウイルスに効果がある薬剤はインフルエンザや水痘など一部の疾患に対するものだけです。従来、かぜに対して二次的な細菌感染の予防に抗生剤を多く使用してきましたがこれも意味がないと考えられるようになりました。むやみに抗生剤を使用することで最近、抗生剤の効かない細菌(耐性菌)が増加して問題になっています。

 夏かぜの中には自分の体力・抵抗力で治さなければ治療薬のないウイルス疾患が多く、規則正しい生活や適切な食生活を心がけて乗り切りたいものです。

2004年6月22日掲載

© TOKUSHIMA MEDICAL ASSOCIATION.