徳島県医師会 トップページへ

  • 文字サイズ標準
  • 文字サイズ拡大
文字サイズ変更について
県民の皆さまへ

 今月は小児科でよく見るせきについてお話ししています。せきは気道内の分泌物や異物を排除する生体の防御機能のひとつです。新生児や幼弱乳児では痰の喀出力が弱く、せきをしても気道内の異物を十分に排出することが出来ません。このことが成人や年長児に比べてせきの回数が多かったり長引いたりする原因になります。またせきが長引くことで栄養状態や睡眠が影響を受けて成長が障害されることもあり、子どもにとっても家族にとっても長引くせきは悩みの種です。

 せきには乾いたコンコンというせきと、痰をともなう湿ったゴホゴホしたせきがあります。乾いたせきは上気道からのせきで大部分は感冒、急性咽頭炎が原因と考えられ、数日から1週間以内におさまります。痰をともなう湿ったせきは咽頭よりも下の気道、つまり気管や気管支、肺に原因があって長引くせきが多いものです。せきの持続が1週間以上続くものは遷延性のせき、30日以上持続するせきは慢性のせきとされます。しかし慢性のせきのように見えても、急性のせきが反復しているものがあります。とくに保育園など集団生活を始めたばかりの時期には繰り返してかぜをひくので、せきが長引いているように見えることがあります。いずれにしても長引くせきの中には重要な疾患が隠れている可能性があり注意が必要です。

 せきの原因は年齢によっても頻度が異なります。全年齢を通じて多いのは咽頭炎(感冒)や気管支炎によるせきです。新生児では先天性の気道の異常や狭窄などによるせきがあります。哺乳児によくせき込む場合には気道に何か異常があるのかも知れません。乳児期にはウイルス性の感染症やアレルギーによるせきが多くなります。家族にアレルギー体質がないか、アトピー性皮膚炎などの基礎疾患がないかなどに注意すべきです。幼児期になると鼻炎や副鼻腔炎によって鼻汁が咽喉に流れ落ちること(後鼻漏)によってせきが出ることがあります。さらにマイコプラズマやクラミジアなどの細菌性の気管支炎や肺炎が見られるようになります。学童期以降には心因性のせきが隠れていることがあります。それぞれの年齢群で多いせきの原因を考えながら注意深い観察が必要となります。

2004年2月17日掲載

© TOKUSHIMA MEDICAL ASSOCIATION.