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県民の皆さまへ

 今月は子どもの薬についてお話ししてまいりました。一般に薬は病気に対して有効な作用を持っていると同時に、どうしても避けられない副作用のために毒にもなります。とくに大人が使っても問題のない薬でも、発達途中の子どもにとっては使うことが出来ないものがあります。

 例えば、解熱剤では大人ではよく使用する解熱剤が子どもではほとんど使えません。それは大人では解熱剤が炎症を抑える働きをするのに、小児では有害な作用として働いてしまうことがあるためです。例えば、アスピリンがライ症候群の発生に関与したことや、インフルエンザの時に使用した解熱剤のせいで脳炎・脳症で死亡する頻度や後遺症の確立が高くなることが知られています。小児科領域で唯一使用が認められている解熱剤はアセトアミノフェンです。最近、解熱剤の使用にあたってはとても慎重になっています。

 発熱は生体の免疫機能が刺激されて免疫力が高められ、自然の治癒力を引き出すように働き、これを無視していたずらに解熱剤を使用すると感染症に対する抵抗力が弱くなって、治癒が遅れるとされます。しかし発熱による食欲の低下や不機嫌などによる睡眠不足などで体力の低下を来たせば、疾患の治癒にとって不利に働き、このような時には解熱剤の使用を躊躇すべきではありません。ただ体温を下げることだけが解熱剤の目的ではなく、一時的に体温が下がって機嫌が良くなる、食欲が出る、睡眠がとれるなどの目的を持って、節度を守った使い方をすれば、むしろ解熱剤の効果は有難いものです。

 本来、薬は苦痛を取り除くために使用するのですが、副作用をいたずらに恐れて適切な量や期間を使用しなかった場合には十分な効果を望むことは出来ません。薬の正しい使用で十分な効果が出れば有難いものです。飲まない薬は効きません。抗生物質にしろステロイドホルモンにしろ、薬が無かった時代には苦痛は耐えるしか仕方がなかったものです。いたずらに副作用を恐れることで薬の持つ有難さを忘れてはなりません。

2002年9月24日掲載

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