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今月は食事の習慣についてお話ししてまいりました。世の中が豊かになって、食べるに困るということはほとんどないと思いますが、反対に有り余る食品の中で何をどれほど、どのように食べるのか判らずに迷うことがあります。有り余る食物があるのに、ひどい好き嫌いや食べる時間がなく、貧しい食事しか出来ていない子どもがいます。
私達が昔から受け継いできた和食は大変すぐれた食事だと考えられています。和食のすぐれた点は、米や麦、雑穀などの主食に魚介類、野菜や海藻のおかずを組み合わせた、非常にバランスの良い食事だからです。ただ最近はこのバランスが崩れてきています。それは日本人の食事形態が洋風化して、魚介類よりも牛豚鶏など肉類を好むことが多く、ファーストフーズと言われる外食を利用することが多く、また硬い物や骨のある物を食べるのが苦手であったり、魚料理や野菜の煮物など和食の調理が苦手な母親が増えて食卓に和食が出せないか、洋風におかずを食べるのと同じにごはんだけ食べるような子どももいます。さらにサンドイッチ、ハンバーガー、カレーやスパゲティなどのように味がついていてそのまま食べられるものを好む傾向があります。和食のように白いご飯におかずをそえて一緒に食べて、口の中で食物を混ぜて噛むうちに食物の持っているうまみを感じるような食べ方が苦手になっているようです。口に入れた時にすぐうまみを感じられるような物を好みます。
これはお菓子にも当てはまります。口の中でしばらく噛んでいるとうまみの出てくるような物より、口に入れるとすぐおいしいもの、甘いジュースやなめらかなクリームやケーキが好まれます。これらの味の濃い食物は塩分の取り過ぎにつながります。肉類や甘い物、クリーム状の物などはカロリーや脂肪分の取り過ぎにつながることがあります。口の中に入れてすぐうまみを感じるような食べ物より、口の中でゆっくり噛んでうまみを感じ、素材の味を感じることの出来る薄味の食事を子どもたちに食べさせてやりたいものです。
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最近、子どもたちの食事が乱れてきたと言われます。クラブや塾のために食事の時間がひどく遅くなったり、家族の都合で子どもだけで食事をしたり、朝食を抜くなど、とても不規則な食事になっているのではないでしょうか。食物は成長過程の子どもの身体を作る材料として非常に大切なものです。また食事を共にすることは、人と人との絆を強くするのに役に立つと思われます。
私達は毎日3度の食事をすることがあたりまえのように思っていますが、食事の時間や回数は人によって随分異なっています。その時間も最初から決まっている訳でもありません。新生児期には1日に何度も授乳していて夜も昼もありません。生後1年頃には朝・昼・夜の3度の食事と、1~2度のおやつを中心に時間が決まってきます。このような食事のリズムは睡眠のリズムや体内のホルモンリズムと無関係ではありません。毎日決まった時間に食事を摂ることで、消化酵素やインシュリンの分泌リズムが確率し、効率的な消化・吸収ができます。食事のリズムが確立すると体内のエネルギーが安定的に供給され、その結果、安定した睡眠が得られ、他の生体リズムも安定して昼間の行動は活発に、夜間は静かに睡眠休息することが可能になります。反対に、食事の習慣が不規則になりますと、睡眠リズムを始めとする生体リズムが不規則となり、身体の活動や成長にも悪影響が及びます。
我々の身体の中にある生体リズムの時計は常に社会の時間と時計合わせをしていなければなりません。時計合わせの目安として食事は重要な役割を担っています。他の人と食事を一緒にすることで、他人と共通の時間を持つこととなり、人間関係は密接になります。家族が共に食卓を囲むことで、家族の絆は強くなります。子どもを1人で食事させるようなことがあってはなりません。とくに夜少々遅くとも、朝食時には家族がそろって食卓を囲むことで毎日の大切な時計合わせが出来ると、その日の活動が有意義なものになるものと思われます。
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最近、硬いものを噛んで食べることの出来ない子どもが増えているようです。食物を噛まずに食べる子どもや、軟らかいものばかり欲しがる子どもなどが多く、固い物や繊維質の多い食物をしっかり噛んで食べる習慣づけが出来ていないように思われます。この原因のひとつに離乳食がうまく進まなかったと思われるケースがあります。母乳やミルクだけを飲んでいる乳児が、自分の歯で固形物を噛んで普通食を食べるようになるまでの過渡期の食事が離乳食です。離乳食の開始は生後5ヵ月頃で、生後1歳過ぎに普通食となり離乳食が完了します。新生時期から乳児期早期にはほとんど母乳(ミルク)だけで栄養を摂っていますが、5ヵ月頃になると出産前に母体からもらってきた鉄分などの栄養素が使い果たされて、ほとんどの乳児は貧血状態となります。ミルクは水に溶けた栄養であり消化・吸収はいいのですが、固形物に比べて栄養をたくさん摂るのには効率がよくありません。従って、身体が大きくなって必要な栄養量が多くなるのに、うまく離乳が進まなければ栄養不足に陥ってしまいます。
離乳食にはドロドロから始めて、だんだん硬くなり、最終的には固形物になります。最初は少量から始めて、乳児が嫌がれば無理強いせず、2~3日かけてゆっくり増やしていきます。乳児が嫌がっているのに無理やり口の中へ食物を入れると、スプーンを見ただけでも拒否反応を示すようになります。反対に喜んで食べるからといって最初から大量に食物を口に入れてやると、ろくに噛まずに飲み込むようになります。軟らかい食物はもちろん、硬いものでも噛まずに飲み込む癖がつくと、その後に噛む習慣をつけるのが大変です。物を食べる時には、ゆっくり噛む習慣をつけることが大切です。よく噛むことによって満腹感がえられ、必要な栄養を無駄なく摂取できるようになります。食事は離乳食の時期から出来るだけよく噛んでゆっくり食べる習慣をつけたいものです。
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夏かぜが流行する頃に髄膜炎が多発することがあります。夏かぜのウイルスが原因で起こるウイルス性髄膜炎です。髄膜炎には髄液から細菌が検出される細菌性髄膜炎と、これ以外の無菌性髄膜炎があります。無菌性髄膜炎の中で最も多いのはウイルス性髄膜炎です。
髄膜炎の主な症状は高熱、頭痛、嘔吐に頚(くび)の後が硬くなること【項部(こうぶ)硬直】が特徴とされます。髄膜炎を起こすと頭蓋内で髄液の産生が増加して頭蓋内圧が亢進し、髄膜刺激症状と呼ばれる頭痛や嘔吐が見られるようになりますが、子どもの髄膜炎にこれらの症状がすべてそろう訳ではありません。元々子どもの頭痛の訴えははっきりしませんし、項部硬直も緊張している時に判断するのは難しいものです。子どもの不機嫌さや全身状態で髄膜炎の存在を疑うよりありませんが、実際には髄液検査をしなければ確定診断がつかない場合が多いものです。ウイルス性髄膜炎はほとんどが自然に治り、予後の悪い病気ではありませんが、その急性期には頭痛などの苦痛が激しいものです。診断確定のために髄液検査をすることは、髄液を排除することで脳圧が下がって頭痛などの症状を軽減することにつながります。しかし最も大切なのは、ウイルス性髄膜炎と治療法の異なる他の脳炎や細菌性髄膜炎を鑑別することです。
ウイルス性髄膜炎の原因になるウイルスは様々ですが、夏かぜのウイルスであるエンテロウイルスが最も多くおたふくかぜウイルスがこれに続きます。結核性髄膜炎や真菌による髄膜炎はウイルス性髄膜炎の髄液所見と区別がつかないことがあります。また高熱でけいれんを起こしたのか脳炎のためのけいれんなのか区別が難しい場合もあります。
ウイルス性髄膜炎は後遺症を残すことは少ないとされていますが、乳幼児がかかった場合にはその後の発達に充分注意する必要があると考えられています。
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ポリオは小児麻痺とか急性灰白髄炎と呼ばれるウイルス性の神経疾患です。ポリオウイルスは夏かぜなどと同じエンテロウイルスに属するウイルスです。最近、我が国でポリオの発生を見ることはありません。ポリオについて最近の話題は、ワクチンの副反応およびワクチンの変更についてのことになります。それは子どもに生ワクチンを投与した時に免疫のない家族がポリオを発病することです。
今から40年ほど前にポリオが全国で大流行し、旧ソ連からワクチンを緊急輸入して流行を沈静化したことがあります。その後、ワクチンの普及や衛生状態の改善などにより日本をはじめ先進国でポリオはほぼ撲滅されたと思われます。ただ日本以外の外国、インドや南西アジア、アフリカなどにはまだポリオが流行している地域がたくさんあります。海外旅行や仕事で外国に行く人は、ポリオに対する免疫がなければ、発病の危険性があることを知っておかなければなりません。
ポリオにかかっても90%以上は不顕性感染あるいは不全型で終わり、典型的なポリオとなるのは0.1~0.5%程度であると言われています。軽い場合には発熱や咽頭痛や咳などの呼吸器症状、下痢や嘔吐などの胃腸症状を呈するだけですが、重くなると髄膜炎を示すものがあり、これらの症状の上に弛緩性の麻痺が出現すると典型的ポリオとなります。麻痺は発熱などの症状がなくなる頃に現れます。
現在、日本では経口生ワクチンを使用しています。生ワクチンは不活化ワクチンに比べて免疫が出やすいのですが、ワクチンのウイルスが人から人へ遺伝することで、ポリオが野生化し、発病することがあります。これに対し、不活化ワクチンは効果の点では生ワクチンに劣るのですが、ワクチン由来のポリオが発生する危険はありません。従って今後、日本でも欧米先進国のように不活化ワクチンの導入が検討されています。